皆伐をした跡地には例外はあれど植栽が義務付けられている。
伐ったら植えろ、と。
5年程前までの林業界は、全国的に森林整備事業が「間伐」を中心に展開していた。
林業≒間伐、と。
間伐では植栽義務が発生しないために、各地の山林種苗店は苗を作っても活用する事業体が極めて少なくその需要も生まれず、これまで随分な数の種苗店が廃業していったと聞く。
また、間伐作業で山から出てくる材は作業効率の点で量多くなく、加えて後々にいい山を作ろうとする劣勢木間伐ではC材(チップ材)D材(バイオマス材)ばかりが搬出されることになり、山主に還元される金額などたかが知れてしまう。
そんな中でここ5年程、戦後の拡大造林期に植栽した人工林スギ・ヒノキ一斉林が木材としての活用が見込まれる伐期を迎えその木材資源が充実してきたことを受けて近年、林野庁も軸足を替え「小面積皆伐」を推奨し、山から伐り出される木材に対しては合板工場、バイオマス発電施設等々を受け皿として用意し、林業事業体や森林組合に対して遠慮なくジャンジャンバリバリ搬出してくんせえ、とのこと。
山から搬出するためならば、高性能林業機械を現場に投入するための森林作業道等の開設費用も助成しましょう、と。
片や皆伐後に需要が見込まれる苗に対しても数年前より植え勝手の良い「コンテナ苗」というものを開発して種苗店にもその設備投資の助成をし、ポット苗はじめ植栽のための苗作りを推奨し、更新を促している。
全部伐ったら新たに植える、これを「更新」という。
また自然林を伐って人工林に更新することを「拡大造林」と、人工林を伐ってまた人工林への更新作業を「再造林」と呼称する。
「皆伐した後そのまま放っておいても何やかや生えてくるやろ、温帯湿潤気候なんだから」と言う向きもあるけれども、高木種の木でなくては成林したとは言わず土砂流出・崩壊等を防備する国土強靭化、森林の持つ公益的機能の向上は謳えないという。
個人的には、深層崩壊の事例を持ち出す前に小高木や低木でも防備林としての効果の有無について一考の余地があると思う。
そもそも「素材生産業」として始まった弊社は、その後「森林整備事業」にも手を伸ばした経緯があるが、もとより小面積皆伐推奨以前より皆伐更新作業を行っていたために山林種苗店との付き合いは続いていた。
皆伐後の植栽の際に弊社がスギヒノキ等の苗を注文する山林種苗店から「お宅は組合さんとは違って沢山使ってくれるから」と謝意を伝えられたことも度々、今年もその大量注文のお礼にとダンボール箱一杯いや、二杯の大量の人参を頂いた。これは、育苗だけでは生活が立たないと、何年も前のその注文少なかった不況時にはじめた副業で作った特産人参なのである。
完品も時折混じるものの、大半は売り物にならない形質不良品か、割れの入った不良品で店主いわく「味は良いから」と。
まともなものは社員に小分けにしてジャンジャカ持ち帰らせた。
それでもまだ、大量に残るこのキズもの人参群。どうする。
更新の話はここまでとし、人参の話はまた次回したい。
更新するとまたスギ・ヒノキの山になるんですね。しかし長い時間を考える産業ですよね。今時のほとんどの短絡ビジネスとは本当に生きる世界が違う。100年単位の長い時間を勘定に入れるという習慣を、いまの社会も教育も政府も持ち合わせていない。会社組織は100年も続かないから。
大量ニンジンは、酢漬け、塩漬け、薄切りにして乾燥野菜、素揚げの作り置きもおいしいよ。
林業には短伐期施業・長伐期施業という言葉もあって短でも30年、長に至っては120年以上を掛ける産業です。成果をすぐにと求める超の字の付く今の短絡社会生活に(加えて溢れるような情報)すべての人が適応できるはずもなく、林業のような長い時間を掛けた産業に参入できる間口を用意しておいたほうが、弱者受容の点でも有効だと思います。あくまで仕事はキッツいですが。
乾燥野菜は次の好天期間にやりますわ。
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