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巷では随分と話題を振りまいている小説のようで、割れた世評に対して昨日立ち読みしたFielder誌 Vol.35には擁護する論調の記事が掲載されていた。
狩猟登山家・服部文祥氏が書いた初の小説で表題作と「K2」を掲載、共に「命」を問うている点はこれまでの氏の著作物と同様である。
「K2」ではカニバリズム(食人行動)が登場するが、この夏にNHKで大岡昇平「野火」の特集があったのを思い出した。島田雅彦氏が解説していた。
夏前に著者より恵与頂いたので、拝読してちょっと経つ。感想は上手く書けないけれど、ここでは感じたことを書き留めておきたい。
稚拙ながら作文する側の当方の想像として、登場人物を殺人に差し向ける、若しくは極限状態において人肉を食わせるシーンを写実的現実的に書くという行為(氏の場合はパソコンらしい)が、作文中の著者本人の心拍数を上げ、手に腋に嫌な汗をかきつつ成されたのではなかろうか、というのがあった。
ライフルを人に向けて引き金を引き、その弾が命中したであろう手応えの想像と、その感触。
人肉を死体から切り取り、口に運んで嚥下するまでの色味やニオイ、そして味覚や歯応えの想像をする著者の姿を。
創作による、疑似の体験。
この場合は「殺人」と「人肉食」に当たる。
産後に母体から排出された胎盤を食べるのとはちょっと訳が違う(第二子出産の際に、我々は有難く頂いた)。
文筆でその行為に肉薄できるかは、やはり経験からアクセスする他ない。
少なくとも、冷房の効いた室内で小手先だけの知識を転がして為される批評は当たらないだろう。
そう、「命はナマ臭い」。
氏が行っている実際の狩猟からすると実の表題は「娘と狩猟に」なのだろうが、娘さんの成長譚も今後楽しみです。
服部文祥、この人は残るだらう。
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