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週末に行った我々の高賀六社三山へのトライアルを終え、今思うところを書きたい。
事前にはかなりキツイ挑戦になると想像した。
何せ距離が45.98km、一日で累積標高3938mを上り下りする六乗越「六社三山」計画である。エラくないはずがない。
結果、完遂には至らなかったので大きなことは言えないけれど、ただ実際に歩いてみた体感として無理な挑戦ではなかった、と今思う。
歩行距離は33.04km、累積標高(上り)2821m(下り)2469m、歩行時間11時間33分、四乗越「四社二山」までが今回の結果である。
ここ最近にもあった敗退、失敗癖が出てしまった形とも言える。
私はこれに一体何を求めたのか？
昔の足腰の頑強な人達にとっても容易い参詣には無かったことと想像する。ましてや合同ハイキングでもなかったはずだ。
いにしえ人はきっと「高賀六社一観音」めぐりに何某かの願掛けをしたと思われるし、身体に強度の負荷を掛けて巡った暁にはどんな感慨を持ったことだろう。
今回は想像される負荷の大きさからソレばかりに気を取られ、あらかじめ自分の中に原初動機を探ることを怠った気がする。
なぜこの様な行為を成そうとするのか？ 何故山に登るのか？
この山行にはこれまでの雪山や奥山の沢登りに出掛ける際に感じる生命を脅かす環境は無かったし、人口の増えきった21世紀の今の日本でこれが奥山かと言えばそうではなく、むしろどちらかと言えば里山に近い。何となれば携帯電話が通じてしまう環境である。
だから、私が通常の山行に求める薄っすらとした「死」の気配を感じるための行為にはなかった。
むしろ「生」それも死と対照の生ではなく「生きているということ」を感じられた山行だったとは今にして言える。
ナチュラルハイにもトランス状態入神脱魂恍惚状態にも入る前に頓挫してしまった今回だったがそれでも事後、非常に深い満足を得られた。
それは、六社と三山という与えられた条件下で我々なりに計画を練り、下準備をし、日々を遣り繰りして諸条件を整えて実践したという単なる山登りの結果としてではなく、それ以上のモノが今回は体感できた。
「大滝登りは”祈り”である」とかつて看破したのは成瀬さんだけれど、遣り切ってはいない今の私にそこまでの卓見は採用できない。
こうして思索の場を与えられたことだけでも、その効用は大きかった。
今回、敢えて記録にラインを示さなかったのは今後実践される方に折角のトライアルに対する想像の芽を摘みたくない思いからである。
かつては自制心でもって自主的に情報を制限して想像の翼を羽ばたかせる登山者も居たものだったが、これ程までに情報が軽はずみに利用される時代に於いては提供する側に非を向けかねられない昨今である。二十一世紀という時代は、創造の世界に遊ぶことの叶う山の世界ですらその翼を折りかねない「情報」ありきで話が進んでしまう脆弱さを孕んでいる。
この記録を読んで、挑戦してみようとする奇特な方を私は歓迎する。
まずは三山を含めないかつての「高賀六社一観音」をご自分なりのラインで描いてみるのがいいと思う。かつての参詣はこの三山を含むものとはきかないが、その三山に登頂しない縛りで地形の弱点を探って線を結ぶのは難しいとも思った。
更に、あくまで”私だけの”「高賀六社一観音三山」を実践頂くことを願うし、またそれは『私だけの登山』にも換言できうる願いである。
逆打ち良し、車利用もまた良し。
『私だけの登山』になってさえいれば。
追；やはり石氏は強かった。
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