制作;日活&石原プロ、石原裕次郎主演の「太平洋ひとりぼっち」を観た。米国版タイトルは『Alone on the Pacific』。
映画自体は観ていてそう面白いものではない。ただ、やはり行為自体が"抜けて"いることがこの映画を只の映画にしていない。ただ、観ていてそう面白いものではない。繰り返して御免なさい。
監督に市川崑、脚本に和田夏十、音楽に芥川也寸志と武満徹が当たる。フルートジャズが挿入されていたのは武満氏の仕業か?
日本を離れるあたりで数度の嵐に遭遇し、遅々として進まず焦りもあったことだろう。夜間、台風を遣り過ごす恐怖が観るものの想像を越えているが、只中に居たら恐怖に慄く暇もないのだろうか? よく沈(転覆)しないものだと思った。その危機に至って「何妙法蓮華経」を連呼するシーンが印象に残った(本には無かったと思う)。「法華経に縋りまする」
密出国でパサポルテも携行せず、横断の暁にアメリカ大陸に到着したら「まぁ、どうにでもなるやろ(監獄に入れられるくらいで)。」という大らかさが23歳の堀江謙一青年の大なるところだと思う。無謀でもなんでもなかったことを身をもって証明した点で。戦争時代を経験していることも作用しているのだろうか? 人間を信じていたのか?
父親役の林雅之は別人に見えた。田中絹代がいつになくいい感じだった。「死ぬときはおかあちゃん、って言うんだよ」だったっけか? 口数少ない、この洞口依子のような妹は誰かと思えば、石坂浩二のかつての奥さんだった。こんな浅丘ルリ子ならイイ。
この大それた行為も、隠密だけあってささやかな出航で、孤独を独り言で埋めるような三ヶ月を経て、サンフランシスコに到着するやプレスに取り囲まれて喧噪の中で幕を閉じる。こういうことって、ありますよね。本の後記に事後、苦楽を共にしたマーメイド号と二人だけの時間を持てなかったことを悔やむ件があったが、わかるなぁ。
今時こんな映画を掛けるロイヤル劇場は岐阜の誇りだ。
数か月前に劇場ある柳ヶ瀬の古書店で購入し、寝床に積んだままの「太平洋ひとりぼっち」の文庫本、読んでみようと思う。
観て、そう面白い映画でもなかったけれど、読んで、面白い本なのかもしれない。
『Alone on the Pacific』と『Alone on the Wall』、時間当たりの体験濃度の違いこそあれど、同列に凄い人為と思う。いや、素晴らしいと言うべきか。
えっ? 岐阜での放映を予想してでしょうか? 原作まで!
現物を見たことがおありとのこと、「どうやってこんな大きな船を屋上に揚げたんだろう」は実に、子供のリアルですね。海洋冒険にはこれまで関心を持ったことは無いのですが、この世界もまた探検的価値の大きなフィールドに思いました。たった一人で何が成せるか、という一点が私には価値大きな映画でした。
その映画は小学生の頃、学校から伊勢市駅前の映画館へ行って観ました。50年以上前です。
たぶん、私が船乗りに憧れたきっかけだったような気がします。
こどもながらに「血が騒いだ」映画でした。
以上。
リアルタイムで観たんですかっ。子供ながらに血が騒いだこと、判ります。
山よりも、海の世界は私にとって想像を越えて恐ろしさの潜む世界ですが、学生時分に観ていたら、私も何がしかの影響を受けた映画だったかもしれません。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する