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何の偶然か、この度の間伐施業地が私の林業師匠のすぐ向山であり、着手するにあたって一昨日、挨拶がてらお宅に伺った。二ヶ月振りに。
そのお宅に向かう石段で大切に育てている山野草が枯れており、玄関先は水道管の破裂であろう水浸しの状態で、胸騒ぎがする中訪問すると、、、。
「おお、macchan90か。ヤットカメやな。ワシもなぁ、もうアカンぞ。」
二ヶ月振りに見る親方；キヨッさは、随分と痩せてしまっていた。62kgが、50�圓法Ｊ垢韻弌∋笋�二ヶ月前にヨキ(斧)の柄の挿げ替え(柄の交換)を頼んだ辺りから体調を崩し、医者に行けば即入院となってつい先日、癌の告知を受けたという。膵臓がんが肝臓にまで転移している現状という。膵臓癌は見つけ難い癌の一つだという。
しかし、落胆の素振りを見せないのが流石というか、奥さん共々気丈にもこれまでの経緯を話して下さった。疼痛も今のところは無い様子で、一見してこれまでとそう変わらない。「今、仕事は4人で来とるか？ チェーンソーの音、聞きゃ判る。」 流石、デス。
ヨキの挿げ替え代金を、言い値で払うつもりでピン札用意してきたのだったが、受け取ってもらえなかった。樫で作り置いた柄も、これが最後の一本だったという。「エラぁてなぁ、あんまし上手く出来なんだゎ」
私も明るく振舞ったものの「ありがと、また来るわ」と別れて運転する頃にはドッと悲しみに襲われた。「. 悲しみ」
あの、キヨッさがいなくなる。何てこった。
昨日翌朝、思い立って鰻でも持って再訪しようと、まずは関の名店「しげ吉」へ。行列嫌いの私も、こんな時は我慢して待った。昼食には間に合わなかったものの、晩に食べてくんせぇと渡せた。かつて私が贈った時計型ストーブを前にして、例のロングトークに興じた。
あの、元気者のキヨッさが、居なくなってしまうなんて。82になったばかりで。
居なくなる前に、聞いておきたいことがある。
同日見舞ったその足で、次女のたっての希望で先週に引き続いて姪の居る姉宅へ赤ん坊を見に出掛けた。赤子を抱いた次女の笑顔が眩しい。
生物には、生き残りの戦略として死があり、そして生があるという。
何の偶然だろうか、帰宅してメール画面を開くと、三月に大滝登攀を予定していたA氏より、先月父を亡くし、母も膵臓に腫瘍が見つかって大滝登りの計画を延期して欲しいとの連絡が入っていた。
すい臓の「膵」の字を、覚えたばかりだというタイミングで。
今日は今日で次女は、長女と連れ立ってオッカと三人でまた抱っこに出掛けた。次女も、産後の母子の相手をする家内に似た仕事に就くだろうか？ 生を見つめる仕事に。
あの親方のことだ、遣り残したことのない人生だと思う。でも、少しでも長く生きて欲しいと願う。これまで、ヨキの挿げ替えを何本も頼んできたが、これが最後の一本になる。
未だ、聞きたいことがある。
