戦後16年を経過して制作されたSF映画であり、僧侶でもある松林宗恵監督の代表作、という。よくある希望的未来が示された戦争映画の結末かと思いきや、そうではなかった。核ミサイルはニューヨークへ、モスクワへ、ロンドンへパリへ、そして我が日本の首都・トーキョーへと発射されるのだった。
先日、星野道夫の本を読んでアラスカの地名を地図で確かめた際に、アメリカとロシアがベーリング海峡を挟んだ隣国であることを目で確認したばかりのことで、本映画では北極海上で発生した衝突が契機となってミサイルのスイッチが押されたのだった。
結婚を約束した仲である宝田明と星由里子が、モールス信号で受け答えするシーンが痛かった。核兵器により首都東京が損なわれることを知る宝田が「コウフクダッタ」といい、星が応える「アリガトウ」に、自分の死を自覚する以上に愛する人を永遠に失うことを呑み下して打電する心の痛みは計り知れない。果たして東京は灰燼に帰し、洋上に居た宝田は生き残った。
現場の軍人たちが、発射ボタンを押すことに強い抵抗の意思を示す人間味が印象的だった。躊躇い、涙を流して赤いスイッチを押す。また、フランキー堺がyoneyamaさんに見えて仕様がなかった。当時の日本の人口は9,000万人で、中国は未だ脅威として認識されていない(ワンシーンだけ登場)。
星百合子(18)も、白川由美(25)も当時37歳の乙羽信子も美しかった。地球上の美しさが損なわれること、それが戦争の一番の悲劇なのかもしれない。金子光晴ぢゃないけれど。
本映画のラストクレジット↓
『この物語は すべて 架空のものであるが 明日起る 現実かも 知れない。 しかし それを 押しとめよう! われら すべてが 手をつないで…。 まだ それが 起らない中(うち)に』
先の見えない今の時代に、警鐘を鳴らす実にタイムリー且つ惨い上映映画だった。
姉より次女(私の姪)が出産した報を受け、その足で出産祝を携えて産まれたばかりの女児を見に行った。産後20日といい、その三キロばかりの乳児を抱いた。
絶望の映画の後に、希望を抱いた気がした。
ムムム、む、娘なんですが。
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