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そのお陰で、平出和也・中島健郎両氏の「K2西壁 二人の軌跡」を図らずも観ることができた。三月放映分の再放送のようだ（5/6;1030-1200）。勿論、悲しい結果を知っての視聴だった。
イチローを想起さす平出氏の語り口には、世界的アルパインクライマーとして積み重ねてきた実績由来の重みを時々感じた。対する中島氏は軽妙で、コンビを組む際には厳しい局面で好適に作用するであろう明るさ朗らかさがあった。撮影機材の進歩もあって、極めて生々しい迫真の映像が二人の番組の売りだった。
滑落死という結果に、山野井泰史氏の言う「刻みが大きい」という言葉は当たらないだろう。ゴドウィンオースティン挑戦を志して実行に移すまでに、ラカポシ南壁（！）、カールンコー北西壁、ティリチミール北壁と着実にステップを踏んでいたのだから。クルティカと同等かそれ以上の挑戦資格を持っていた二人だった（そのクルティカの最高々度は超えた）。それら経験を以てしても、K2西壁の巨大にして罠の多い壁を越えることはできなかったのだ。冬に三戸呂＝青木ペアのヒマラヤ番組（ニルギリ7061ｍ）の放映があったが、平出＝中島ペアが如何に高いレベルにあったかが判ってしまう造りだった。それにしても惜しい人材を失くした。
ラストに両氏それぞれの奥さんが現れて痛々しかった。共に家族を背景に持ち、母子家庭でこれからを遣り繰りする二人からあんな言葉を採るNHKのデリカシーを疑ったものだが、ただ覚悟はあったのだろう、気丈な言葉を聞いた。二人はK2に逝ったが彼女たちはこれ以降、母として自らの"K2"に登るのだろう。人はそれぞれ大なり小なりの"K2"を持っている。
観れば見るほどK2というのは厳しくも美しい山である。南南東リブとはいえイヌイ、よくぞ登ったなぁ。合掌。
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