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就職希望時に世話した事務所の人間に予め聞いていたのだが彼は大変大人しく、兎に角、喋らない奴だった。ただ、素直な性格が幸いして上達は早かった。剣道をやってきただけあって心身共に鍛えられていたことも手伝って。アヤちゃん本人に直接依願されたことは一度もないけれど、私が親方キヨッサから受け継いだ伝統的伐倒術のすべてを注ぎ込んだ(つもり)。ただ、死亡事例も極めて多い伐倒作業だけに、手放しで伐らせられるわけもなく、小五月蠅い指導を随分と積み重ね、塗り重ねた。
平坦な場所で伐る大径木は問題ない。問題になるのは急傾斜地で伐るそこそこの径のスギヒノキで、5kgはあるチェーンソーを滑落必至の悪い場で振るい、妙な体位で受け口を掘り追い口伐りして伐り倒す指導って、一体何だろう?! それでも二年と経たず、杉はもとより檜の大径木も伐れるようになった。当初36人居たという同年の岐阜のFW(フォレストワーカー)見習いも三年目で13人に減ったというが(23人脱落!)、そんな中で二番目くらいには伐れる男になったのでは、と思う。多分、一番上手いと思うケド。
アヤちゃん育成前は私一人が伐倒作業を負い、危険に危険を重ねるような作業に二度の骨折休職をした。育成中にも靱帯損傷、骨折を負って休職したものの、教え子を怪我させること無く済んだ事だけが救いだった。休職中に果物下げて黙って見舞いにきてくれたのはアヤちゃんだけだった(他の連中の何と薄情なことよ!)。
ここ近日は二人交代で、伐るに難しい檜の伐倒を繰り返した。アヤちゃんは私の長男坊と同年のため、自分の息子の面倒を見る思いで事に当たった。
いやはや、ここまで来た。五尺檜伐倒の後ろ姿を眺めて、思った。
技術面での目に見える向上以上に感じるのは、二年半前には考えられなかった会話にある。「、、、はい」と「オ、オッケーです」しか口にしなかったアヤちゃんも今では「今日、、、、雨、降りますよね?」くらい喋るように変化したことだ。文字数が増えた! 主語と動詞がある! ここまで実に、、、、長かった。
それでも、喋らない奴と一緒に時間を過ごす心地良さを感じたのは意外な収穫だった。元より、アタシだって無駄口なんぞ叩きたくない。
私のような人格破綻者が人材育成に関わるのが世も世、世も末なら地球が沸騰するのも判る気がする。
何にしてもこういうのは私にとっての世の有り難い一つのギフトである。生きてっと、こんなことも偶にはある。
搬出間伐もいよいよ終盤に入り、月曜で危ない伐倒、伐採もいよいよ終わり、後は仕上げに入る。助成金対象としてアヤちゃんの面倒を見るのもあと三月、怪我だけはすんなや(オレも)。
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