2度目の道迷いは、濃霧のなか、完全に方向感覚を失った体験でした。
よく問題になる体験で、恥ずかしい気もしますが、当時の記録から書き
出します。
1974年8月、このときも帰省のついでに、安達太良山に登ったときのこ
とでした。父と次姉(当時、福島労山)の3人の山行でした。
湯川渓谷のルートでくろがね小屋まで上がると、すぐ上に鉄山から馬ノ
背にかけての稜線が見えます。私たちは、くろがね小屋で昼食をとりました。
13時前に出発するころには、ガスが立ち込め始めていました。
本来、稜線に出るには、右手に硫黄が堆積した場所を通り、正規の登
山道は左斜めに折れて、馬ノ背へと上がって行きます。
ところが、この山はもう4回目、という慢心があったのでしょう。私は
踏み跡に導かれて直進してしまい、急なガレ場を鉄山方向へと登ってしまい
ました。
そのルートで降りてきた人がいたため、私たちも上がってしまった、という
状況でした。
霧が私たちを包み、踏み跡は消え、岩場の登りになり、視界は5メートル
ほどになりました。方角を失ったというよりも、宙に浮いているような感覚
でした。
おぼつかない足場を拾って、ようやく赤い裸地におおわれた鉄山の一角
に登りあがりました。
「もう、大丈夫!」。私は馬ノ背から稜線を安達太良本峰へと向かうため、
這い上がった場所から左手=「南」の方角へ進んで行きました。
ところが、縦走路をたどるはずのこの方角には、さっきよりもずっと険しい
岩場が待ち構えていました。途中までトラバースしたものの、どこまで進ん
でも岩場ばかり。素手で進むのに危険を感じて退却。
また赤い裸地におおわれた鉄山にもどりました。
時刻は15時20分。私たちは、ずっと霧のなかを動き回ったため、寒さを
感じ始めていました。この段階で初めて、地図と磁石を出してみたものの、視界
がないために、周囲の地形と照合ができません。
鉄山山頂まで30メートルほど移動し、そこから馬ノ背方向(ほぼ南)へ進ん
で、崖状の地形の上で、視界が回復するのを待つことにしました(15時35
分)。
このとき、運がいいことに、前方の崖下の少し先に、馬ノ背の稜線とそこに立つ
標識が見えだしました。
すると、私たちがさっき降りて行った道は、90度から120度ほども、大きく
ずれた、沼ノ平方向への岩場だったことになります。
ガスはさらに晴れていきます。さらに40分、様子を確認。私たちは、崖
を迂回して馬ノ背に降りるザレ場をたどって下降。馬ノ背の標識まで到達し
ました。
このあとは、ウソのように見通しが開けてきました。
17時過ぎに安達太良本峰に到達。馬ノ背を経て、18時10分にくろがね小屋
に戻りつきました。
日帰りのはずでしたが、3人とも、もう動く気力なし。父が電話で小屋に泊まると
家に連絡を入れて、私はこの小屋に初めて泊まることになりました。
それにしても、人気の安達太良山で、あんな目に遭うなんて。思い出すたびに信じられない気がします。
*霧の中、視界を断たれると、以前に何度か登った山でも別の山に変じてしまう。
*1つの行動から次の行動に移る場合、必ず現在地と方角を確認する。
*濃霧のなか、ルートが不明な時は、静かに待ち、考えることも大事。
当たり前のことかもしれませんが、このときの私自身の教訓です。
それから5年後、1979年にトムラウシから化雲方面へ下降の際、2人
パーティーで大きな火山岩の堆積地帯で、突然の濃霧に包まれたことがありま
した。
私たちは、20分ないし30分ほどのことでしたが、前方が確認できるまで、
じっと待ち、この場所を切り抜けることができました。
この翌日、高根ガ原で行き違った父子パーティーが、私たちが迷いそうになった
付近でルートを失い、雪渓に入り込んで遭難したことは、以前の日記に書いた
ことがありました。
その後、この一帯はロック・ガーデンと呼ばれるようになり、安全のため目印のロープも張られた場所です。
何度か歩いている道で、晴れていれば「迷う」など到底考えられない場所で、濃霧に巻かれ、ルートをしっかり歩いているつもりで微妙な感覚のずれから、分岐で方向の修正をして「これだ!」と自信を持って自分の進むべき方角を見つけ、「一応確認しよう。」とコンパスを見たら、いつのまにか自分の思っている方角と180度ひっくり返って、全く反対方向に進んでいた 、という恐怖体験をしたことがあります。これに雪が重なり上下左右も分からない、となったら恐怖ですね、それ以来GPSを持って行くようになりました。現在地をロストする恐怖はすごいですね。みなさん、お守りと思ってGPSを持参しましょう。遭難の原因70%と言われる道迷いが解消されますね 。
tanigawaさん、こんにちは。
道迷いについて、何が対策方法なのか難しい問題ですね〜。
登録前に2回押してしまったようです。すみません。
westupさんも、方向感覚を失う体験をされたんですね。
私の場合は、実際に自分がそんな目に遭うなんて、体験するまで信じられませんでした。
それと、登山道を最初にそれる段階で、分岐や地図の確認を怠り、踏み跡を進んでしまったのは、慣れによる原則逸脱があったように振り返ってきました。
GPSには、私もサポートを受けてきています。
しかし、あくまで位置確認の道具であって、登山道をトレースする登山方式では、これだけで効果が大きいと思います。
しかし、登山道をたどらない登山方式、たとえば沢登りや地形の変化が大きな雪山などの場合、地図からの地形の読み取りや、現場での地形の判断が大きく効いてくると感じています。
このシリーズ、次回はこの体験を書こうと思います。
tayukayuさんへ。
>道迷いについて、何が対策方法なのか難しい問題ですね〜。
そうですね。直面した現場の状況次第ってこともありますから。
私の場合、沢登りをするようになって、道迷いは激減しました。沢は道がないのだから、変な話です。ようするに、地図と磁石、そして地形の読み取りが、だんだん身につくにつれて、ヘマが減ってきたということかもしれません。
沢の分岐点や、ルート取りで、同行者と現場で議論しあうことも経験になったようです。
そうはいっても、これからもヘマはやるでしょう。
道に迷うのはゼロにはできないと思いますが、そのときにしっかり対応できる自分でありたいです。
山では、自分の道は、自分で探す気構えが大事ですね。自分ができること、できないこともわかる。他人や登山道にリードされる範囲にとどまっていては、だめです。
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