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2011年05月22日 18:03野の花、山の花全体に公開

北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)

 シリーズ第3話は、毒草の「マムシグサ」の仲間です。
 花の部分を立ち上げた「茎」に相当する部分の表皮に、マムシの体を思わせるまだら模様があり、おまけに花の部分を内部に包む「仏炎苞」(ぶつえんほう)の形が、蛇がかまくびをもたげたような姿をしています。

 こんな姿の野草、たとえ美味でも手が出にくい。
 姿ばかりでなく、実際に、マムシグサの仲間(テンナンショウ属)は、どこを食べても毒があります。

 それを、数十年の前の時期まで、内地の人々はこの塊茎(球茎)を食べ、アイヌの人々も大事なでんぷん源として好んで食べてきました。
 本州では、塊茎(球茎)をすりおろし、水でさらして毒を流し、粉をねって団子にして食べたそうです。(「食べられる野草と料理法」福島誠一、1998年)

 アイヌは、熱い灰のなかで塊茎を焼いて、中心の黄色の部分は毒なので除いたうえで、食べてきました。(「私の草木漫筆」)

 それだけポピュラーに食べられてきた野草ならばと、私も、ちょこっと味見してみました。写真3枚目が、背丈1mもあるよく生長したマムシグサの塊茎を、掘り出して、2つ割にしたところ。

 まず、指で断面をなでて、その指を舌でなめてみました。
 無味です。(ほんとは、ここで、10秒待てばよかった

 次に、ちょっと大胆に、舌先で断面をひとなめしました。
 3秒後、口の中に濃いアク(灰汁)のような味が広がりました。
 「ああ、これがマムシグサの生の塊茎の味か」と、想定の範囲の反応ということで、おしまいにしようと口をすすぎにかかりました。
 6秒から8秒してから、塊茎の断面に接触した舌の部分、せいぜい1円玉くらいの面積の部分に、強い辛味が現れました。
 辛味は、やけどのような熱さと、ついには痛みに。

 食べないし、ちょっとなめるだけ、うがいもすぐするし、と油断したのが大失敗。
 なんどもうがいをしたけれど、舌のその部分に毒がすり込まれたようで、まったくうがいは効果なし。
 猛烈な熱さと焼けるような中ぐらいの痛みが、20分。
 舌が渇くと熱い。水を口にずっと含んでいないと、たまらない。
 30分たってようやく、痛み、熱い感触がおさまりだしましたが、舌のその部分に何かすり込まれた感じ(麻痺のような感触)は、5時間たってもまだ残りました。

 サポニンが毒成分の主役とされています。これは微量でも危険な相当な毒です。
 誤ってマムシグサの仲間の赤い実をかじってしまった小学生が、口中を腫らして苦しんだ、というほどの毒。
 アイヌは、その麻痺の作用を知っており、毒矢にトリカブトとともに、マムシグサの仲間の塊茎の毒を混ぜ込んで、使ったそうです。

 それを毒抜きして食べる、昔の人の知恵、食糧を得ることの厳しさを思いました。

 北海道にはテンナンショウ属のうち、コウライテンナンショウ、ヒロハテンナンショウなどが分布しています。直行さんの本では、「エゾテンナンショウ」と書いています。これはコウライテンナンショウと同種とされます。
 北海道のマムシグサの仲間は、本州のものにくらべて塊茎もとても大きくなるそうです。

 テンナンショウ属は全国に様々なタイプがあり、ほんとに覚えにくい。写真のものは、マムシグサとして分類されるものと思います。
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コメント

RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
チャレンジャーですね。
自給自足生活では、夏にできる物で冬も過ごさなければなりません。かなりのアク(ドク)抜きもしなければ
食べられない物も多いですね。
 私は少な目のアクでいいです。
2011/5/22 18:56
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
マムシグサが毒草とは知っていましたが、そこまで強力だとは思ってもみませんでした
そんな普通なら食べられないようなモノをどうすれば食べられるようになるか?を経験から導き出した昔の人に脱帽です。
そしてそれを試してみようとされたtanigawaさんにも脱帽です!

ところで、食べられるようになるまでチャレンジを続けるのですか?!
2011/5/22 19:20
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
 kimidoriさんへ。

> 自給自足生活では、夏にできる物で冬も過ごさなければなりません。

 そうですね。どう冬を過ごすかは、命がけだったのだと思います。だから、生きる工夫、試行錯誤が必死にあみだされ、受け継がれてきたのでしょうね。

 以前に書いたことですが、きのこの種類を判別する場合、現場でちょっとかじることは、よく使われる方法です。ほんのご飯粒分くらいを。辛みの直撃もよくあります。
 そしてすぐ吐き出して、うがいをします。
 (この方法も入門したての方は真似しないでください。)

 今回も、それをやったのですが、いままでに体験したことのない衝撃的な相手でした。舐めただけで、舌のその部分が長時間、麻痺です。

 逆にいえば、次の世代に命を伝えるのは、植物の場合も同じです。だから、でんぷんをたっぷり蓄える。そして、それを目当てに子孫の命の糧を食害する動物たちにたいしては、「球根」を毒まみれにするという究極の方法をあみだした。
 自然の世界はすごいですね。
2011/5/22 20:20
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
 tszkさんへ。

>ところで、食べられるようになるまでチャレンジを続けるのですか?!

 もうしません。怖いですから。
 念のためかじらず、ちょっと舐めるだけにして、ほんとに助かりました。
 それに、昔の人々のおかれた状況の、ほんの足元に行けたか、行けないか、という水準でしかありませんが、彼らの真剣さ、懸命さを理解する窓が開かれた気がしますから。
 思い知らされました、という感じです。
 もっと慎重にやるべきでした。大反省です。

 これも、いまでは驚きの話ですが、昔の人は、あのヒガンバナ(曼珠沙華)の根茎も、同じように毒抜きして食糧としてきたそうです。
 マムシグサを使って、いろいろな毒草を薬や痛み止めなども、仕上げてしまった。
 「ない」ところから、工夫は生まれるのですね。
2011/5/22 20:38
Re: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
tanigawaさん、こんばんは。

この話を読んで思い出したのが、ジャガイモの原産地アンデスの、毒のあるジャガイモでした。

そう言えば、生のコンニャク芋も毒があるそうですね。知らなかったので、聞いたときビックリしました。

芋(塊茎)恐るべし。
その毒を巧みに抜いて食料にした人類の知恵(貪欲さ)も恐るべし。
2011/5/22 21:16
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
 pomchan4さんへ。

>芋(塊茎)恐るべし。

 毒の種類種類によっては、体重10キロあたりで0.5グラムで死亡する植物毒もあるそうです。ひとなめ、恐るべし、ですね。
 不用心でした。

 その毒ぬきですが、手元にある「毒草の科学」(一戸良行、1980年)によると、次の段取りです。

1)テンナンショウの塊茎(球茎)の皮をむいて、温湯につける。(時間の記述なし)

2)水に3日以上さらす。毒成分が抜ける。

3)粉を団子にする。

>生のコンニャク芋も毒があるそうですね。

 コンニャクも、もとをたどれば、テンナンショウの仲間ですね。マンナンは、でんぷんとは異なりますが、炭水化物。
 人類は、自然の世界の食用になるものを、工夫し、あるいは改良して、食糧を得てきたのですね。
 野山は、万年単位の昔の人には、まさに生産と採集の場だったのでしょう。

 あのう、白状しなくとも、もうおわかりと思いますが、「毒当たり」があったのは、実は今日でした。お昼の奥多摩の森ででした。
 ごく微量で、すぐに繰り返しうがいをし、飲み込みもせず、が応急処置。
 すでに9時間になりますが、舌はまだ1円玉くらいの面積が半分感覚が麻痺しています。舌の下側もわずかに麻痺があり、触感が回復しません。
 ご飯はおいしく食べれています。
 おさまってきてはいるんで、病院まではまだ考えていませんが、明日も注意と思っています。
2011/5/22 21:52
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
tanigawaさん、一晩明けましたが舌の具合は
いかがでしょうか。

ベニテングダケで幻覚気味になった人も
身近にいますから
ちょっとの味見、も命がけですね。

でも、上田市周辺の人たちは
ベニテングダケを食べるようです。
2011/5/23 8:11
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
 sakusakuさん、夕べと同じでまだ、自分の舌のなかに、自分の舌ではないような一部分があります。
 一晩でも、あまりかわらないですね。
 カミさんは、「ひどいときは、その部位が壊死するんだって!」などと。

 もう十分、勉強になりました。

 ベニテングタケは北信地方などで、酒粕や塩漬けで毒抜きですね。
 なぜそこまでして、と思いますね。

 他人のことは言えた立場じゃないですが。
2011/5/23 9:24
RE: 北国の植物と生活3 マムシグサの「球根」の味(真似しないでくださいね)
 結局、舌が癒えるまでに2晩かかりました。
 ごく微量だったのに。まだわずかに痛み、違和感。
 猪さんらが、掘り当てても、ひとかじりで退散?
2011/5/24 13:07
RE: 舌では絶対、触れちゃいけなかったようです
 その後、坂本直行さんが「私の植物漫筆」でマムシグサのことを書いたときに参考にした歴史的な研究書、
「分類アイヌ語辞典第一巻植物篇」(知里眞志保著、日本常民文化研究所彙報、1953年)
 の該当記述を読んでみました。このシリーズのため、「日本の古本屋」で注文し、昨日とどいた本です。

  こんなことならば、先に読んどけば良かった! という記述がありました。

 まず、「エゾテンナンショウ」(コウライテンナンショウ)について。
 「晩秋、玉茎を掘って囲炉裏の熱灰のなかに埋けて、焼いて食べた。但し、球形の中央黄色い部分は有毒なので、食べる際は必ず剥りとって捨てた。この黄色部は血くだしに卓効があるので、腹に虫が湧いた時、舌に触れぬように気をつけながら丸呑みした。」

 次に、「カラフトヒロハテンナンショウ」について。
 「(上と同じような記述のうえで)これは毒を有するけれども、人が死ぬほどでもないいので、生の時、悪戯に友達を欺いて噛じらせる。すると舌が死んでしまい涎をだらりと垂らすという。
 この玉茎は乾燥して保存しておき、打ち身や乳ばれ、でもの、はれもの、のどの痛み等に、粉末にしたものを飯と練り混ぜて紙または布にのばして患部に貼ったという。」
 現場聞き取りの場所名から、これは樺太のアイヌの用い方です。

 マムシグサの仲間の「球根」を薬などとして使うときにも、舌は、ぜったい触れちゃだめだったんですね。 「舌が死んでしまい涎をだらりと垂らす」。いまどき追実験するおばかをやってしまった
2011/5/24 15:11
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