ひざを曲げて背中をまる め、体を小さくすることを 「かがむ」といいます。私 の郷里の福島県などでは、 「こごむ」「こごめる」と もいいます。コゴミのいわ れは調べたことがありませ んが、体を丸めながら生え 出してくる姿は、なるほど と思わせます。
そのコゴミに、ことしも 出会えました。四月の末に 久しぶりに帰省し、山形・ 福島県境の滑川温泉(標高 七〇〇メートル)、姥湯温泉(同 九五〇メートル)に父母とでかけ ました。コゴミは、雪が消 えた山肌のしっとり湿った 斜面に、鮮やかな緑色の姿 を見せてくれました。冬に 積もった雪の重しが消え、 沢筋にも春の日差しが照り 始めるころに生え出してく るコゴミは、春の使者とい う名がぴったりです。
コゴミはワラビやゼンマ イと同じシダ類なので、初 心者には見分けにくいかも しれません。違いは、色の 鮮やかさです。他のシダ類 の新芽が、綿毛をまとった り、くすんだ色をしている のがふつうなのにたいして 、コゴミは綿毛をまとわな い、鮮やかな緑色です。
地面の中に半分、埋もれ 気味の根株があるのも、目 印になります。コゴミには 、クサソテツという正式の 名前がありますが、根株は 松ぼっくりを立てたような 形で色は黒っぽい茶色です 。なるほど外見はソテツの仲間を思わ せてしまう姿です。コゴミの新芽 はその根株から、巻き込み を内側に向けて、押しくら まんじゅうをするように、 七、八本ほどが生え出てき ます。
食べるのは、クルッと巻 き込みのあるこの新芽です 。茎が太めの、しっかりし たものがおいしいのです。 新芽は伸びるのが早く、巻 き込みがとけて葉が開き出 してしまうと、茎が固くな って食べにくくなります。
コゴミにはアクがありま せん。そこでまずは、なん といっても、おひたしです 。塩を少しいれた湯で、手 早くゆで、水にさらします 。ゆですぎは禁物です。茎 の部分が細いものは、遅れ て湯に入れるようにします 。茎がこりっと歯ざわりが あって、さらにかむとほん の少しぬめりが感じられま す。ほのかな香りも、おひ たしだと、こわれません。 こうしてゆでたコゴミを ごま和えで味わうのも、春 の楽しみです。
コゴミは雪解けの沢筋に フキノトウなどに次いで芽 を出すので、他の山菜が手 に入らない時期には、助け られます。
昨年の春はどこも残雪が 多くて、五月に長野県の鬼 無里村に出かけたときも、 ウドもタラも採れませんで した。でも、コゴミはちょ うど旬を迎えていて、フキ の葉などと天ぷらに。キャ ンプの食卓を飾ってくれま した。
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