第6回は、夕張岳ヒュッテ。
1975年の夏にこの小屋に一晩、お世話になりました。この日は、夕張岳を東から西へ縦断して、13時間余の行動ののちに、この小屋に着きました。
(右の画像が縦走ルートの、カシミール=ランドサット合成画像)
小屋の前に、そばの沢からの細い枝流が自然の流下で導かれ、流れこんできて、その傍らの椅子に座って、管理人のおじさんが迎えてくれました。
小屋は、柱の骨組みに、トタンやベニヤ板の囲いを打ち付けた造りでした。雪が深い夕張地方では、冬の前に小屋をたためるように仕組んでいた様子でした。
小屋の前で自炊をしているうちに、日が暮れました。
前夜は沢沿いで野営でした。この日は、夕張岳への登りでは、ヒグマの脱糞跡が点々と続くような登山道を、人にまったく会わずに行動してきたのに、今夜は灯りがともる小屋で、ほんとにほっとする夜になりました。
小屋は3組と私だけの泊まり。
夏の満月が黒い山稜の上に浮かぶ夜でした。
寮で一緒の山岳部のメンバーから、管理人さんは、股にぴっちり吸いつくような、おかしなタイツを着用しているよ、と聞いてきたのです。
その通りのタイツ姿の管理人さんの話を、小屋の前の長いすに腰掛けて、聴きました。沢水で冷やしたスイカをおじさんはふるまってくれました。
このときの熊の話は、迫力いっぱい! 熊は斜面もブッシュも、ものともせずに、飛ぶように走るという話でした。「ヤブだらけの斜面を、ぽーん! ぽーん! と飛ぶように跳ねて下るんだ!」。
その話をするとき、管理人さんは、両腕をスーパーマンの飛び姿のように差し出してから、がばっと犬かき(熊かき)のポーズをして見せました。
ヒグマは人間が何か抵抗できる相手じゃないなあ、と私は観念しました。
私の記録では、「管理人さんは60歳前くらい」とメモされています。いまの私に近い年代だったのかな。まだお元気でふもとの町におられるかもしれません。
翌朝は6時出発で、麓まで16キロの林道歩きを覚悟しましたが、運良く車に声をかけられて、夕張から札幌行きの三菱炭鉱のバスに乗れました。
当時の三菱鉱業所の札幌駅のバス停は、いまでは高架の脇に高層ホテルが林立する札幌駅の西寄りの、一角(植物園の北側)にありました。
このときの私の記録
芦別岳と夕張岳 1975年8月14〜17日
http://trace.kinokoyama.net/hokkaido/asibetu-yuubari75.8.htm
夕張岳ヒュッテの現況を探すと、地元の「ユウパリコザクラの会」のHPがありました。
http://yuparikozakura.org/?page_id=67
http://yuparikozakura.org/images/kaiho_no90.pdf
(ヒュッテの現況写真はこのサイトから)
市の管理がむずかしくなったため、同会を中心に地元の愛好者のみなさんが、小屋の存続と新しい小屋の建設にとりくんでいます。
写真の小屋は築40年といいますから、私が泊った当時の小屋が、修繕を重ねつつ、存続してきたことになります。ただ当時は平屋建てかせいぜい屋根裏付。収容も30人くらいでした。現在の小屋は収容80人、屋根裏も入れると3階建てくらいに見えます。
トイレも手造りで設置し、現地の自然を保全するため、ボランティアで処理をしているそうです。
小屋の運営に実際に携わっている方々のご苦労は、大変なものと思います。
小屋は、毎年10月に冬囲いされるそうです。
夕張岳は、大きな山です。蛇紋岩の独特の花々が迎えてくれます。
百名山選定の時点で、深田久弥が登っていなかった山のため、ニペソツ山や暑寒別岳などとともに選定から外れ、静かな条件が残されています。
夕張岳ヒュッテの小屋の前を自然に流れていた、あの冷たくうまい水、スイカを冷やしていたあの水を、いつかまた味わってみたいです。
新しいヒュッテ、夏から現地での組み立て?が進んでいて、10月完成を目指していたはずです。
ところで古いヒュッテは、私が中学の頃(1973,4年)に行ったとき、既にこのような状態でしたから、Tanigawaさんが行かれたのが75年なら、たぶん現在とほぼ同じ建物だったはずですよ。
http://yamareco.info/modules/yamareco/upimg/4/43073/e504f2bcc0d3abeda7636a3cd548a8a4.jpg
kennさん、ありがとうございます。
貴重な写真ですね。
ということは、私が1975年に泊まったときも、いまの建て替え前の小屋ということですね。
こんなに屋根が高かったのかと、記憶の薄れを感じます。
建て替えは基礎工事が昨年だったのですが、今年の進捗の様子が、北海道新聞などを検索しても出て来なくて、有志のHPにもなくて、どこまで進んだか不明でした。
ほぼ出来上がって、冬の雪囲いに入るというところまで進んだのですね。
たくさんの気持ちが集まっても事業ですね。
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