ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

HOME > tanigawaさんのHP > 日記
2012年10月12日 21:47山小屋異聞全体に公開

夕張岳ヒュッテ)熊談義の思い出と、新築へのとりくみ

 宵の山談義の季節に、「山小屋異聞」シリーズも再開します。
 第6回は、夕張岳ヒュッテ。
 1975年の夏にこの小屋に一晩、お世話になりました。この日は、夕張岳を東から西へ縦断して、13時間余の行動ののちに、この小屋に着きました。
(右の画像が縦走ルートの、カシミール=ランドサット合成画像)

 小屋の前に、そばの沢からの細い枝流が自然の流下で導かれ、流れこんできて、その傍らの椅子に座って、管理人のおじさんが迎えてくれました。
 小屋は、柱の骨組みに、トタンやベニヤ板の囲いを打ち付けた造りでした。雪が深い夕張地方では、冬の前に小屋をたためるように仕組んでいた様子でした。

 小屋の前で自炊をしているうちに、日が暮れました。
 前夜は沢沿いで野営でした。この日は、夕張岳への登りでは、ヒグマの脱糞跡が点々と続くような登山道を、人にまったく会わずに行動してきたのに、今夜は灯りがともる小屋で、ほんとにほっとする夜になりました。
 小屋は3組と私だけの泊まり。
 夏の満月が黒い山稜の上に浮かぶ夜でした。

 寮で一緒の山岳部のメンバーから、管理人さんは、股にぴっちり吸いつくような、おかしなタイツを着用しているよ、と聞いてきたのです。
 その通りのタイツ姿の管理人さんの話を、小屋の前の長いすに腰掛けて、聴きました。沢水で冷やしたスイカをおじさんはふるまってくれました。

 このときの熊の話は、迫力いっぱい! 熊は斜面もブッシュも、ものともせずに、飛ぶように走るという話でした。「ヤブだらけの斜面を、ぽーん! ぽーん! と飛ぶように跳ねて下るんだ!」。
 その話をするとき、管理人さんは、両腕をスーパーマンの飛び姿のように差し出してから、がばっと犬かき(熊かき)のポーズをして見せました。
 ヒグマは人間が何か抵抗できる相手じゃないなあ、と私は観念しました。

 私の記録では、「管理人さんは60歳前くらい」とメモされています。いまの私に近い年代だったのかな。まだお元気でふもとの町におられるかもしれません。

 翌朝は6時出発で、麓まで16キロの林道歩きを覚悟しましたが、運良く車に声をかけられて、夕張から札幌行きの三菱炭鉱のバスに乗れました。
 当時の三菱鉱業所の札幌駅のバス停は、いまでは高架の脇に高層ホテルが林立する札幌駅の西寄りの、一角(植物園の北側)にありました。

 このときの私の記録
芦別岳と夕張岳 1975年8月14〜17日
http://trace.kinokoyama.net/hokkaido/asibetu-yuubari75.8.htm


 夕張岳ヒュッテの現況を探すと、地元の「ユウパリコザクラの会」のHPがありました。
http://yuparikozakura.org/?page_id=67
http://yuparikozakura.org/images/kaiho_no90.pdf
(ヒュッテの現況写真はこのサイトから)

 市の管理がむずかしくなったため、同会を中心に地元の愛好者のみなさんが、小屋の存続と新しい小屋の建設にとりくんでいます。
 写真の小屋は築40年といいますから、私が泊った当時の小屋が、修繕を重ねつつ、存続してきたことになります。ただ当時は平屋建てかせいぜい屋根裏付。収容も30人くらいでした。現在の小屋は収容80人、屋根裏も入れると3階建てくらいに見えます。

 トイレも手造りで設置し、現地の自然を保全するため、ボランティアで処理をしているそうです。
 小屋の運営に実際に携わっている方々のご苦労は、大変なものと思います。
 小屋は、毎年10月に冬囲いされるそうです。

 夕張岳は、大きな山です。蛇紋岩の独特の花々が迎えてくれます。
 百名山選定の時点で、深田久弥が登っていなかった山のため、ニペソツ山や暑寒別岳などとともに選定から外れ、静かな条件が残されています。
 夕張岳ヒュッテの小屋の前を自然に流れていた、あの冷たくうまい水、スイカを冷やしていたあの水を、いつかまた味わってみたいです。
お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:707人

コメント

RE: 夕張岳ヒュッテ)熊談義の思い出と、新築へのとりくみ
新しいヒュッテ、夏から現地での組み立て?が進んでいて、10月完成を目指していたはずです。

ところで古いヒュッテは、私が中学の頃(1973,4年)に行ったとき、既にこのような状態でしたから、Tanigawaさんが行かれたのが75年なら、たぶん現在とほぼ同じ建物だったはずですよ。
http://yamareco.info/modules/yamareco/upimg/4/43073/e504f2bcc0d3abeda7636a3cd548a8a4.jpg
2012/10/15 19:28
RE: 夕張岳ヒュッテ)熊談義の思い出と、新築へのとりくみ
 kennさん、ありがとうございます。
 貴重な写真ですね。
 ということは、私が1975年に泊まったときも、いまの建て替え前の小屋ということですね。
 こんなに屋根が高かったのかと、記憶の薄れを感じます。

 建て替えは基礎工事が昨年だったのですが、今年の進捗の様子が、北海道新聞などを検索しても出て来なくて、有志のHPにもなくて、どこまで進んだか不明でした。

 ほぼ出来上がって、冬の雪囲いに入るというところまで進んだのですね。
 たくさんの気持ちが集まっても事業ですね。
2012/10/15 19:45
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する