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昨年送った賀状の返事が無くまた、メールに対する返信も無かった、函館時代の恩人である上埜鷲見子さん(仮名)の電話番号のダイヤルを回した。というのは嘘で、0138に始まる番号をプッシュした。
今、自分が良からぬ渦の中に居ることを自覚しているだけに、かなり心臓が躍った。よもや亡くなってはいまいか？と。
上埜さんは、私が大学で講座配属された漁業機械学講座の事務補佐員のオバサンで、二留年アブレ者の私は不思議と目を掛けて貰っていた。
一年間と言う短い期間だったが、御自宅へ夕食に呼んでもらったり、卒業後の地球一周旅行に際して餞別を頂いたりまた、出国後最初の寄港地である上海在住の先生を紹介してくれたりと、何かにつけて世話を焼いてくれた。
私が北海道の住居を引き払い、美濃に居を移してじきに、白川郷観光に託けて美濃くんだりまで遊びに来て下さったりもした。
面倒見のいい性格だけあって結婚式に呼ばれたりと慕う元学生は多かったと聞くが「私、こうして卒業生当てにして遊びに来たのmacchan90が初めてなのよ」という述懐は、ただ正直に嬉しかった。美濃和紙の店で土産物を買い、その喫茶コーナーで珈琲を飲んでこれまでを話した。退官後は孫の面倒で忙しいわ、と嬉しそうな笑顔が何よりだった。手紙や賀状での繋がりがその後も続いて、、、、↑。
果たして電話口に出たのは御主人で、こちらの身分を伝えた上で「鷲見子さんは御在宅でしょうか？」と問うて一拍後に「少々お待ちください」と継がれて「嗚呼、生きていてくれたか」と失礼ながらに思った。存命だった。
「もしもし〜」の声が、一体何時以来の聞き覚えかと即座に考えた。美濃で会って以来の事か。鷲見子さんの声で、些か枯れた感じだ。
賀状は、年も年なので昨年から欠礼しているとの返答だった。
話していると、途中でハタ、と会話が止まってしまうシーンが数度有って、頭の中に？？？が巻いた。
それとなく水を向けてみるも「主人が痴呆症に罹ってねぇ」と仰るも、受話器を置いて思うのは、御本人にこそ痴呆の気配が感じられた。
当時の共通の登場人物を出してすら会話に膨らみがどうにも出てこない雰囲気からも、確信めいて思えた。
夏以来、親の敵のようにCDを買っている。
中で昨日届いた「キヨシ小林/DJANGO SWING」には、ジャズのスタンダードとして名高いバラード(抒情歌)『My one and only love』が選曲されている。
ジャズ演奏の世界では、バラードは歌詞に付された意味に沿って演奏されるべきであるという不文律があって、この文脈からすると片思いを唄う当曲を哀愁テンポで奏でるのが通例である。そこをこのキヨシバコヤシ氏は通常のバラッドテンポよりも幾分速めのslow version�い鵬辰┐董崟�い余ってヤッテしまった」風情の、異例のスウィングテンポ�イ妊献礇鵐献礇�演奏してしまっている。
名手オスカーピーターソンのロンドンハウスでのライブ盤「something warm」の『I Remember Clifford』にも同種の手法が採られている。将来を嘱望された天才トランぺッターの交通事故死という急逝に寄せて、朋友のテナーサックス奏者ベニーゴルソンが作曲した有名曲で、勿論バラードとして演奏される。そこをオスピーは、バラッドテンポで語りを進めつつ、中途よりテンポを上げてミディアムスウィングで弾き倒し、聴く者の涙を誘うという手法に成功している。
差し詰め「悲しいけどお天気」、「泣きながら、笑顔で駆ける」といった風情で。
今朝方も�きイ鯆阿い峠仄劼靴拭�私は泣かないけれど。
・・・・そもそも、鷲見子さんは私を私(macchan90)と認識してくれたことだろうか？
全てをやり遂げ、そのメモ紙を薪ストーブの炉内に放った。
これは予行演習なのだろうか。。。。。。
どうにもスッキリとしない後味を残して。
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