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自然林のみならず、主にスギヒノキ人工林については以前ほどではないにせよ多少なり資産価値が有るということで、山林所有者が目立つ黄色や白ペンキを使って所有界に印をしてあることが多い。
過去に為されたその痕跡を辿って、山林所有者毎の境界区分けをして測量を掛け、面積を算出して間伐等造林補助申請に使用する。
個人所有も多いがまた「財産区」と呼ばれる集落ごとの共有林も多く、どうやら春二年おき毎に集団で山廻りをしてペイントするようだ。
ペイントした上、その横にスギヒノキの樹皮を鉈で削って、マジックで年度日付や所有財産区名を書き付けるのが通例だが、時にハッとするような素晴らしく格好の良い字体で書付けてある木を見つける。
過去に一枚、感激の余り写真に撮ってプリントして風神雷神葉書と共に永らく書斎に貼ってあったものを取り置いてあったのだが、後に会社のデスクに手帳と一緒にして保存しておいたのが仇となり結果、湿気で貼りついてしまって上記右写真のようなみっともなく惜しい写真になってしまった!
戦災で焼失した山脇信徳の「停車場の朝」どころの話ではない。
「平成十九年 山戸分」とあるはずなのだが、「平」も「成」も「山」も「戸」も「分」に至ってもイチイチ字面の格好が良いのだ。見えている「山」のバランスだけでもビリッとくるものがある。「戸」の横棒は跳ね上がっている、「分」もメのように重ねた傘の下に、それと釣り合いを取るべく敢えて崩した刀を配している。現代書家の所業か?
一度やってみると解かるのだが、曲面の樹皮にマジックで字を書く難しさを知った上で、かくもバランス良く堂々とシャッシャッシャッ、と書いてあるのを見るともう、感動モノである。
まずもって肘を固定できない不安定な右手で書くだけでも難儀で、加えてマジック乗りの悪い曲面上の樹皮にバランスを考えて配置よく収めることの容易ならざる事を思うに、相当修練を積んだ「デキる」男の仕業と想像する。
保存写真、こいつはイカン、電子データもネガも見つからないので、山に行ってあの木を見つけ出してまた写真保存だ!
と記憶を辿って山林を歩き回るもどうやら、その春の二年更新に遭って小学生が悪戯書きしたようなショーモナイ筆跡に書き換えられた模様で例の筆跡は見出せず。ショック!
こうなったら、平成二十九年春に期待しよう。小学生には寝ててもらって、デキる男の登場を願う。落命してないよね。
きっと「九」なんかは川平慈英風に「クーッツ!」とくる字体のはず、だ。
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