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おぉ(にし)じゅんこ、ジュンコオオニシ、日本が誇るジャズピアニスト、大西順子である。
1967年京都生まれ、東京都立国立高等学校卒業(ということは、、、スギさんと？)後渡米し、ボストンのバークリー音楽院に学ぶ。
彼女のデビュー当時の事はよく覚えている。男勝りの剛腕美人ピアニスト現る、といった体で東芝EMI傘下の新進レーベルsomethin'elseが強力プッシュし大々的売り出しに攻勢をかけていた。
今風の、BGMにサラリと流すピアノトリオとは対極に位置する、タッチ強靭硬派の奏者で、その後は管入りのクインテット編成でもリーダー作を放ち、それらが誠に好意的に聴衆に受け入れられ、随分なセールスを記録したはずだ。
「酔族館」でも同居していた元柔道部員餃子耳先輩石井健太氏が私に手渡してくれたのが取っ掛かりだったと記憶する。退学を思いとどまり函館の「じゃこ亭」(さんま亭の対抗馬)で卒業に向け勉学に励み？息抜きに葡萄屋やJBハウスへ飲みに行く日々(思えばJBを教えてくれたのもケンタ氏ではなかったか！)の中だったので1993年冬、発売直後の事だ。そのCDから落としたテープを随分とよく聴いた。アドリブフレーズなんかはすべて口笛で吹けると思う位に。
村上春樹(京都生まれ)の本は文庫本で買うのが私の中での決め事なのだが「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を今は無き自由書房芥見店で見つけた時にはクラシックの話だろうと期待せずに手に取った。小澤征爾氏(満州生まれの立川市育ち)は若いころからジャズにも関心高い音楽家であることに多少の期待を込めて。
案の定、ベートーベンブラームスマーラー等々が目次に並び、う〜むやはりそうだよね、と諦め半分に最後までその目次を繰るや「ん？大西順子？共演？」何でも小澤氏と村上氏、そして大西順子氏が出会い”化学反応”を起こした長い道のりの件が22ページほどの小編として掲載されていた。これはこれは、と久し振りに本を買って帰宅し、じっくりと読んだ。
英国作家カズオ・イシグロ氏(我がステイシーケントが氏作詞の歌を唄ったものがある)やピアニスト、ダニーロ・ペレス(ロイヘインズとの素晴らしいディスクがある)との大西順子に纏わるエピソードがあり、そして小澤征爾氏との話へと移行する。
どうやら春樹氏は、順子氏に対するかなりな熱烈度を持ったファンらしく、ライブやコンサートにも繁く足を運んでおり、引退表明した厚木での最後のライブにも出掛けた時の話が導入になっている。
征爾氏「おれは反対だ！」かぁ、言えそうで言えない。大西順子がアルバイト？！
黒人ドラマーの演奏を聴くと、表層の打音のその下に、筋原線維の(ヒノキみたいな)強靭さ由来の粘りある音を感じることがあるが、それと同様なことをこのピアニストの打鍵には感じる。正に、強靭無比。ウィントン・ケリーの右手の打鍵なんかもその範疇にある。
五作目の「Piano quintet suite」(写真中)は、紫が目を引く好ジャケットだが、ひっくり返すとちょっと「ギョッ」とする仕掛けになっている。表ジャケ写を下に”パン”すると、細いけれども腕組みするその筋肉が、カールした美形の御顔と極めて不釣り合いに盛り上がっている。前腕だけ男性のそれと挿げ替えた様にも見える(写真右。小さくて見えない向きには購入をお勧めします。�△痢�1、2、ア、ア、アー」が良いのデス)。
前腕、スゲエ。聴こえてくる打鍵音もむべなるかな。
彼女はセロニアスモンクに衝撃を受けてジャズピアニストを志したそうだが(折しも村上氏は近年、モンクの本も編んでいる)彼女の左手を多用する奏法から、いの一番に想起するピアニストは何と言ってもエディ・コスタだ。
先週、何の偶然かセコハン屋500円コーナーにエディとジュンコ二人の2枚が並んでおり、レコードで持っているにも拘らずその因果を考える意味で購入、ここ連日の通勤で大音量で両者を聴いている。この人の選曲はかなり凝っているというか、ジジグライスはいいとして、ミンガス、エリントン、オーネット、ガーナー、米山 正夫と、ごった煮の感がある。20代のうら若き女性が聴く音楽としてはちょっと、、、。自作曲も印象に残る。
大西順子プロデュースの『Pandora』中の「us three」も”本家”に次ぐ素晴らしい熱演デス。
で、結局のところ彼女は戻ってこられたのだと思う。
この三者の邂逅を契機として。
素晴らしい。
追記；小澤征爾氏は満洲国奉天市（中国瀋陽市）生まれ。父小澤開作は歯科医師(山梨県出身)、満州国協和会創設者の一人で、同志で満州事変の首謀者となった板垣征四郎と石原莞爾から一字ずつ貰って第三子を「征爾」と命名した、とある。甘粕正彦氏とも関連なくはない。
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