親方のキヨッさと測量に出た折、林道脇に斃れていた。
「一昨日来たときは無かったで、昨日やな。水飲みに降りてきたがここで力尽きたんや。」
え、会話できるの?
息絶えて一日、腐敗臭は無かったが既に目敏い蠅がたかり始めていた。
カモシカ、1955年に特別天然記念物に指定されている。
だが1973年から岐阜県では林業に対する食害防止のための駆除が進められている、ともきく。
シカの名が入っているが、シカの属するシカ科ではなく、ウシやヤギと同じウシ科に属する。したがって、シカとは違い、ウシ科のほかの種同様、角は枝分かれせず、生えかわりもない。
「ポキン金太郎(つげ義春より)」と角が取れないかと掴んで揺すってみたがビクともしなかった。
ニホンカモシカは、古くは狩猟対象であり食用とされていた、その味が鴨のように美味だから「カモシカ」という説もある。
山仕事してるとよくよく見掛ける。自生している野生蘭なんかよりもよっぽど見かける機会は多い。
それにニホンジカ加えたら、山に行ってシカを見掛けない日の方が少ない位だ。今日も会った。千松信也氏に言われるまでもなく鹿は増殖中で、林業における獣害も酷い。
ただ、今回の様に死体として真直にカモシカを目にする機会は初めてで、その艶々とした毛で毛氈(もうせん、けむしろ、かも)【フェルト】を織ったのか、などと思ってもみた。
嘱託で自然保護観察員をしていたこともあるキヨッさによれば、特別天然記念物指定故に死体を見つけての通報義務が発生するというので役所に電話すると、担当部署は意外や教育委員会だった。ピンポイントで当てられるような地図を作成し、更には測量杭の番号までヒントに与えたにも関わらず、市職員は探し出せなかったと申す。
そんなこっちゃイーデス・ハンソンに叱られっちゃうぜ。
ここを花や山菜取りの場とするキヨッさ曰く「通報もエエんやが、持って行ってくれんと俺に取っちゃあ”ホーム”が臭てカナワンデな。」あ、そう。
カモシカの死体を見て、憐憫を掛けるでもなく私がイの一番に思ったこと、それは
「喰えんもんやろか」
鴨も一度しか食べたことないくせに。
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