ジャズという音楽を愛好する群れの中には一部ではあるがレコード収集を、少々の偏執さを露わにして行う人達が確かに居り、村上氏もそうであるしラズウェル細木氏も然りまた私も氏ら程ではないにせよその気はある。ガツガツしない、品性を残した”猟師”で居たい思いはあるのですが、中々。
ジャズならず他ジャンルでも同様だが、過去のものである国外の音源を聴く際にそのソフトは再発輸入盤(一般の輸入盤)であり国内再発版でありするのだが(今のデジタル時代については明るくないので最近の動向については何とも言えない)、それら大元である初版をオリジナル盤として珍重する傾向があり、その販売は今日日の中古レコード店の看板事業の一つでもある。
ジャズのオリジナル盤は当然ジャズという音楽が生まれたアメリカ合衆国で当時の物価に応じたそれなりの値段で販売され、50年以上も経った今でも意外にも劣化することなくむしろ当時の時代性を帯びた価値を有したまま、在る。初版故に音質が素晴らしい、だとか景気を反映した分厚い厚紙使用のレコードジャケットに、コテコテのコーティングを施したデザイン性も備えたそれだけでもうアートとしての「作品」だというのに、おまけに音まで出るのだから堪えられない。
新世紀を迎える前辺りから、日本の中古レコード業者が、本国アメリカで不要物同様超安値で売りに出されているジャズレコードオリジナル盤を買い漁り買い占め、それを日本国内に持ち込んで転売して利益を上げる商売を始める動きが特に目立っていた。実際、日本国内で見掛けるその手のレコードは高く、学生もしくはプー太郎の私には手の出ない価格帯に設定されていた。
村上氏が米国のプリンストン大学に客員研究員として招聘されたりタフツ大学に移ったりした本国滞在中に、ブーム前の穏やかな時期の各都市に散在したアンティークショップやガレージセールでジャズレコード漁りをしていたことは想像に難くないし、実際そういった記述も御本中にある。「ペッパーアダムズのピカピカのオリジナル盤が何と!たったの@ドルで置いてあった。」等々。
私が1996年に地球一周の途上で立ち寄った米国内の中古レコード屋でも、有名店では価格高い店舗も現れ出して上昇傾向が見て取れたものの未だ未だ安く、垂涎のオリジナル盤が1ドル99セント!だとか鼻息随分荒い思いもし、良き時代の残り香を嗅ぐことができた。
その一周旅行の資金稼ぎでもあった前年1995年の水産庁マグロ延縄混獲調査の際に立ち寄ったペルーの首都リマでの「狩猟」の出来事は未だ私の中で良き思い出として残っている。
東京豊洲の港を出た照洋丸は、ホノルルに寄港し燃料を補給、同時に日本から空路飛んできた多忙な水産庁職員をも乗せてペルー沖で調査を開始した。男ばかりの船内生活は所謂”派閥”と”密閉空間”とでいい思い出ばかりでもないけれど、極めて貴重な体験をすることも叶った。それも有給で。マグロも随分と食べたし、亀こそ喰わなんだがアオザメは食った。
ホノルルでは熱心にその手の店を探して回らなかったために機会も無かった(きっと有ったことだろう)。
リマでもセントロのソカロ周辺で銀細工土産購入に勤しみ、特段眼中にも無かった。にも拘らず路上の物売りが広げた店先にあるモノを物色するや「ん?」レコードが目に入る! そこにはジャズこそ無かったものの、小便臭い街角を歩き回るうちに『・・・あったよ』って(笑)。ジャズの米国オリジナル盤が。それも何でこんなところにこのような稀少盤が状態良く、且つ(ここが一番大事なところなのだが)こんなにもお安く! その上で船内暇にあかせて覚えたてのスペイン語で「チョト高〜い、マケてチョ」と値切る始末。しかしなぜにこんな場所にこうも沢山あるのだろう? 仕事で長期滞在の米国人が本国に戻るに際して売り払ったとみるがどうだろう。
【この時の記憶の補足になるが、水産庁業務としてリマ寄港時にお世話になった現地法人某氏が、翌年1996年12月17日に発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件に巻き込まれたことを後に知った】
その後メキシコのマンサニーヨの港を経由し、東京に帰港。そうして補助調査員の役目を終えた後、それで稼いだ金握りしめ、その太平洋航路を繋いでユーラシアへと旅立ち、イスタンブールでガチャ盤を買い、ローマで我慢していた購買欲が炸裂して以降、パリで、ロンドンで、将又本国アメリカ合衆国各都市で持ち金の範囲内で買い漁り、成田に辿り着いた時には両手にズッシリとハンティングの成果物を抱えての帰国と相成った。
今から丁度、20年も前の事だ。
こういった時代背景を含んだ買い物というのは、時を経てもその価値を有しているという意味で、安からぬ出費だったけれどもやはり手に入れて良かったと思える。
そして20年経っても未だ、聴いている。
ジャズという音楽を。
長い旅先でものを買うと、運ぶのがタイヘンですが、やはりザックに収めたのでしょうか?何か木枠の箱とか?レコードは熱い手で抱えて運び続けると、へりがちょっと曲がっちゃったりしますよね。中学生の時に女の子に貸したビートルズのLPの端がちょっと曲がっちゃったんですよ。
購入後、梱包して郵送といった智恵が無かったのが何とも若いと申しましょうか(郵便事情に信頼がおけなかったこともある)。
メキシコに安くて丈夫くレコード向けの手提げ袋が市場に売ってました。ので、手持ちで。
流石の私もザック入れは曲がるの見え見えなので避けました。
上記話は「ビートルズショック!」ですな。
「ずうとるび」のレコードなら笑って済んだのかも。
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