週末、ようやっと読めた「美術手帖2015.7」河鍋暁斎特集号。
暁斎(かつて狂斎)の事は、何処で知ったのが始まりだったかは忘れたが(京都で観た肉筆画だったか、キャバレー王・福富太郎の本だったか?)何にせよ強烈な印象を残す画家ではある。
登山で言うところの「オールラウンダー」(奇しくも次号rock&snowの特集名と同じ)で、狩野派絵画から春画を含んだ版画浮世絵まで何でもござれで、「手帖」内での表現を借りればさしづめ「東京藝術大学出で漫画家」といえば判り易かろうかと。いや、ちょっと弱い。それでは山口晃氏だ。
暁斎についての各氏解説はどれも愛が籠った読ませるもの揃いだが、西尾康之氏の分析は特に興味を惹く。
画家や漫画家に、暁斎から刺激を受けたものは人知れず多いと思う。漫画家・真鍋昌平の「スマグラー」はその一つだと思うがどうだろう。
氏の画業を伝える代表作の一つ「新富座妖怪引幕」制作の経緯と過程とを説明したしりあがり寿氏の漫画も笑える。
縦4m、横幅17mの大作を、酒を飲みながら4時間で!一気呵成に描き上げてしまうその力量たるや、只事ではない。
「キョーサイが新富座妖怪引幕を仕上げたことに比べれば、こんな○●は造作もない」という喩えなり慣用句を、いつか使ってみたい。
一流でありながら書画会(サイン会みたいなもの)では画題構わず客に請われるがまま何でもかんでも書きまくる一面も持ち、そんなスタイルがアカデミックな評価の場から忌避された、とある。
ただ、そんな事情とは無縁の海外での評価は一様に高く、海外経由で国内での評価が見直された経緯は他ジャンルでもありがちな話ではある。
かの探検家・松浦武四郎とも交流があり、武四郎に依頼され描いた作品も残されている。
些事に拘らず多くの作品を残し、大酒飲みだったエピソードは、ジャズでいうとZoot Simsみたいだ。一定水準を保った上、駄作無し。
伊藤若冲(文字変換がすぐにコレで成されることに驚く)が一時期大いに持て囃された例に似て、暁斎再評価の機運が高まるといい。
昨年末、いよいよ本館「河鍋暁斎記念美術館」へ勇躍乗り込もうと調べてみれば年末年始は休館との事、アレレ。また、今夏は帰省叶わず。
本によれば昨年夏2015年7月22日〜9月13日に東京藝術大学大学美術館で「うらめしや〜展」が開催され、あの「幽霊図」(福富太郎所有だろう)も観られたようだった。その年の夏に限って上京せず仕舞いだった(代わりに羽黒三山と鳥海山に行っていた)。
今、HP見ると8月20日〜10月2日の会期で碧南市藤井達吉現代美術館で「鬼才 河鍋暁斎展 幕末と明治を生きた絵師」展が開催される、と。 おお、それは観なければ。秋めいてきたことでもあるし。
遠からず、埼玉県蕨市にある本館を訪問したい。
ミュージアムショップには、猫グッズ、蛙グッズ有りこちらも楽しみにしている。
インタビューにもある館長で曾孫の河鍋楠美氏もえらく強烈な感じの方だそう。
この方、画才が無いと自覚して、東大医学部行ったげな。博士。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する