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椅子だの机だの大型テレビだのポータブルトイレだの髭剃りだのあったものの、1.5往復で済んだ。
退去に当って、父の最期を看てくれた山にも登れる看護師・佐藤ショーミー氏にその父の「今際の際」を話してもらった。私よりもお背が低いのに実に立派な手をしていらっしゃる。
私が退室した当日7日13時半以降、痰の絡みもあってこまめに様子を見てくれていた模様だった。吸引をすると食べたものが入ってくるところを見ると、やはり誤嚥が起こっていることが確認できた、と。
その日はここ近日にしては珍しくオヤツを食べると言って実際15時過ぎにゼリー状のものを食べたそうで、表情も良かったし、私も同様にそう思っていた。
再度見回った際には、いつもと違って中空を見つめる風になって、呼吸も弱まってきたという。ここで担当医に電話を入れて、私にもソレが掛かってきた。
何度も呼吸が弱まって、声掛けで幾度かは戻ってきたようだったが、私の到着五分前に苦しむことなく静かに逝ったという。
「これまで何人も看取りましたが、あの安らかな感じはもうこの世に未練はないといった風に私には写りましたよ。」と。隠し立て無くShow meしてくれてありがとう、ショーミー。
土田世紀の漫画「俺節」に「耕治よ、生き様は死に様ぞ。」みたいな文句があったのを未だに覚えている。そればかりではないと思うが、核心は突いているとは思う。もがき苦しむ人も居ようし、カタリと逝ってしまう人もいるだろう。善し悪しではない。
その死に際に、表れてしまうものがその人のこれまでだろう、と。
いい人生だったかどうかは本人にしか判断し得まいが、家内がこう言っていた。
「お父さんは、お母さんと出会えたことが一番の強運だったし幸せだったと思うよ」
まあ、良しとしよう。
私の最期はどんなだろう。バンザイして生きたい、いや逝きたいものである。
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