氷雨降る中で、全身ビショ濡れになってチェーンソーを振り回していた10年前、ひとたび風邪でもひこうものなら体力消耗の度が過ぎて治そうにも治らなかった一ヶ月。
幸いにして重大な労働災害にこそ遭わずに済んだものの、機械化の殆ど進んでいない旧態然とした労働環境で肉体疲労の度合いは桁外れに高かった。
林業は土建業と比較される重労働とされるが、環境整備の進んだ土建業の機械化の浸透に比して、林業のソレは未だまだ発展途上だった。過労が祟って眼底出血で医師にその労働負荷の度合いを問われた親方キヨっさ曰く「林業と土建業なんて、比較にならん。話にもならん。」職業別カロリー消費量という資料を読んだが、三倍は違うし林業はダントツトップだった(次点はプロのダイバー)。
私は現場作業員としての経験をした上で、稀なケースとして事務員の仕事にも携わることが出来た。表と裏。白と黒。
今でこそ経験を積めたと好意的に捉えることもできるが、当時は森林経営計画の作成というとんでもなくハードルの高い仕事を唐突に振られて心身共に消耗した。家族にも随分と皺寄せをしてしまった。今の息子の不登校とも関係していると考えている。
今にして思う。アレが私にとっての「七帝柔道記」だったのだと。
山岳部に入部して直ぐ様オロフレ山遭難が発生したのも随分と精神に堪えたものだったが、それとは継続期間が違う。
来る日も来る日も心の休まる暇のない過酷な労働、幼子の居る落ち着かぬ家庭、そこでの不和、労働対価に見合わぬ安い賃金と、先の見えない仕事、先も見えない将来。
こんなにも辛かったっけ、人生って。
ただ、仕事が面白かったことが唯一の救いだった。
何故、人は働くのか。何故、私は?
労働って、一体? 充実した人生? 労働対価としての金? 椅子取りゲームにゃ興味ない。豊かな人生? そこで家族は?
仕事を辞めた今、そもそもの意味を問う機会は多い。労働に始まり、登山、音楽、衣食住、咖喱、珈琲。
未だ未だ解らないことばかりだ。
さも解ったようなフリをして通りすぎることのないよう、注意したい。
辛い思いも多かったけれど、まずは充実した11年間だった。
総てに、感謝したい。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する