ピアニストであるトミー・フラナガンの、些か盛り上がりに欠ける現地ライブに際して氏が個人的にリクエストをするならばという仮定でその場で選曲した二曲が、曲順は違ったもののズバリビンゴだったその奇跡ともいえる天文学的な希少さを掬い上げた驚き。
愛聴していたペッパー・アダムズのオリジナル盤の表題と、その偶然の符合。
ジャズの神様?
年末の草津から帰還の翌12/29、江戸に出て恒例のジャズレコード漁りに出掛けた。これは、私の数少ない娯楽の一つに挙がる。
お茶の水にあるdisk union jazz Tokyoは、世界を見渡してみてもこれくらいジャズに関する情報とブツが集積されている場所は他にあるまい、と言えるほどに愛好者には堪えられない「零磁場」である。
ここ近年レコードの、この価値の凋落ぶりと言ったらない。かつて10000円は下らなかったオリジナル盤が今や1000円とある。千円!!
断捨離流行りで物を持ちすぎないことがステ−タスになっている昨今に、重量物であるレコード蒐集など流行らないのだらう。
かつて金もないのに一枚の希少なレコードに支払ったあの万券は? いや、まあいい。
村春氏の上記件と似たような話が私の身にも起こったので、ここに書き付けてみたい。春樹氏にしか理解の及ばないであろう内容であることを、あらかじめ御了承頂きたい。
店内をひと回りして抜いた中古CDやレコードをカウンターに持ち込んで、購入の意思と値段の折り合わない微妙な線上にあるディスクを試聴させてもらう。試聴して購入を決められるのは何処ででもあることにはなく、ディスクユニオンの一つの"売り"にもなっている。
内容が良ければ買うし、さもなくば、、、、。そんな一枚に「bengt hallberg trio」【写真】のレコードがあった。
内容は取り立てて素晴らしいものでもなく情念の薄い淡白なピアノトリオなのだが、個人的に好きなこともありまた、未だCD化されておらずオリジナル盤で3400円とあった。10年前でこの値段なら即買いだが、このデフレ時代にあるとこの値付けでも高いと感じてしまって試聴して決めることとした。
試聴コーナーには二台のレコードプレイヤーが並んでいた。
五枚ほど手にした試聴予定のレコードの中で、やはり件のベントハルベリトリオを一番目に聴いた。う〜ん、1000円なら買うかなぁ。
そんな時、隣に30代と思しき髪ボサボサの青年が私の隣に立ち、やおら試聴を始めたそのレコードを横目で見て驚いた!
えっ、「bengt hallberg trio」同じレコードやんかっ!
夢を見ているのかと思った程だった。
「ジャズに詳しくない方のために、いちおう説明しておきたいのだが【P.13】」このレコードはそうやたらめったら見掛けるレコードにはなく、いやどちらかといえば滅多に見掛けない類のレコードであり、このレコードが同じ店舗に二枚あることが偶然なら、こんなマニアックなレコードを抜く客が時を同じくして二人居ることも偶然、更には同じ日の同じタイミングで二つしかない試聴コーナーに隣り合わせで同じレコードを試聴しているこの確率と言ったら無い。
オマケにその値付けたるや900円! えっ!
青年がこのレコードを、試聴だけして買わずに返品したら私が買おうと思って好意的に観察していたらこのボサ青年、5枚ほど手にしていた他のレコードをすべて返品したというのによりによって(選りに選って?)件のベントハルベリ盤だけ手に残して「これだけ貰います」と涼やかに支払いを済ませて出て行った、、、、。
かつての私が彼だったりもして、知らず知らずのうちに呆然と佇んだオジサンが過去には居たのかと思うと、まあ心楽しくもあるか。
悪い夢のような出来事であった。
本気と書いて「マジ」って、一体誰が言った? 立原あゆみではないはずだが。
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