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これも第4回2006年開高賞受賞作である。
1995年3月20日に東京都で発生した地下鉄サリン事件の実行犯、豊田亨氏と同級だった筆者による、大罪の分析作業である。人が人を裁く、とは。
オウム真理教を材に扱うだけに、デリケートな部分の多くあった取材、執筆だったと想像する。心的ストレスも相当なものがあっただろう。
東京になどまず行かない私が、よりによってその一月後には水産庁の照洋丸に乗船するとて上京(正に霞が関!)する予定だったことも有って事件そのものが記憶に強く残っている。
本作は開高賞選考会でスッタモンダあったことが容易に想像できる。
些か発想の「飛び石」が見受けられて、整合に問題があるのではと思う箇所が幾つかあった。突飛、なのだ。
ただ、その精査はここではしない。そんな印象を受けたとだけしておく。
感想文ではないので関連した備忘ということで書き留めたい。
私には沢登りで二度だけ同行したことのあるH氏という五つほど年嵩の上の知人がおり、氏とは大学が同じで部も山系の隣の部という間柄だった。
その部は冬山も沢登りも岩もやる医学部生中心の中々ハードボイルドなクラブで、部同士の情報交換もするけれど私とH氏は個人的な直接の知り合いにはなかった。
これまた不思議な縁なのだが、家内が6年で卒業後更に二年通った鍼灸学校の仲良し同級生にミキちゃんが居て、その彼氏(後の伴侶)がH氏だった。
H氏は東大を出て誰もがよく知る有名企業に就職したものの、思うところあって退職後、医学部を受験し直してその間に山に目覚めたと聞いた。東大では何の活動をしていたかと言えば実直な性格を反映してか合気道部で、そこで豊田亨氏との交流があったと聞いた。
私とH氏は今では賀状のやり取り程度の付き合いで、極稀に鯔背な沢登り記録を氏がブログに挙げた際に私がコメントするような間柄に過ぎなかった。
それが何の偶然か、昨日そのH氏より箱でタンカンが送られてきたタイミングに驚くという以上に不思議な縁を感じた。
人間の往く道など一見どんな可能性をも含んではいるけれどその実、出会いや気付きの現状縛りで限られた展開しか見ようがないのかもしれない。
逆に言えば、誰しも豊田氏の立場に嵌まる可能性を秘めているとも言える。だから一面的な物言いで「奴は酷い」という発言は慎むべきだろう。それでは薄い。もしかして、巡りが巡りなら登山などとは無縁に地下鉄でサリンを撒く役どころにポツネンと立っていたかもしれないのだから。
タンカン、大変美味かった。明日からの山行にも持っていく。
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