保品

　就職活動の帰途、古道具屋で「あっ！」とビードロを見掛けて購入し連れて帰った。
　ビードロ、別名ぽっぺん。正式名は、ぽぴん？
　『昔懐かしいガラスの楽器。口に息をためて吹くと、底がへこんだり膨らんだりして「ポッペン」と音がします。子どもの成長や家族の幸せを願い、厄落としの意味をこめて昔から吹かれています。』　水を入れて一輪挿しにもなる、とある。

　2003年の晩秋、長崎を訪れた際に購入し、その後の旅行中にも細心の注意を払って持ち運び、美濃の自宅にまで持ち帰った記憶がある。兎に角、欲しかったのである。
　暫くぽぴんぽぴんと楽しんだが、じきに割れてしまった覚えがある。何と言っても底が薄〜いガラスであるからして、割れないはずがない。その割れる宿命のガラスで、へこんだり出っ張ったりさせて音を鳴らすんだから、その作成は精緻を極めるのではないか？　思うに、究極の玩具！

　その入手後、程なくして結婚し、あれから15年。結婚は、それが割れる前だったか、それとも割れた後だったか、定かでない。
　ビードロとビードロ、ぽぴんとぽぴんとに挟まれたこの期間、私は殆ど成長していないのかもしれない。

　いつかまた、それが割れてしまうことも知っている。