やはりというか、予想に違わず実に読み応えある一冊で、引き込まれる内容だった。
一度ならず二度までも漂流体験を持ちその結果、行方不明になった沖縄は伊良部島・佐良浜出身である本村実の背景を探る著者の旅の記録と言ってもいいだろう。
「何故にまた、再び海へ?」
綿密な取材によって背景を起こし、主役である本村実の出自や航海への原初動機を浮き彫りにするその手法は、彼を語る周辺登場人物の際立った個性も手伝って取材の過程を語ること自体が読者の興味をグイグイと惹く程に面白く、私は歯医者に行くのを危うく忘れる程だった。
その内容はネタバレにも繋がるのでここでは書かない。けれど、私にもマグロ延縄漁業の経験が(たったの百日ですが)あるので、角幡氏の筆力の高さはその点においてだけでも理解が及ぶ(【第八章 いろは丸乗船記】)。読んでいて、1995年当時の光景が目に浮かぶようだった。得難い体験の毎日に、楽しかったような、閉鎖空間で苦しかったような、何でもないような〜【虎舞竜】。私のは調査船であり、いろは丸は正に商売船、である。
浮沈の激しかった遠洋漁業界の経緯も実に良く調査して書かれている、、、ようだ。水産学部の授業で習ったような、習ってない様な、寝ていたような、何でもないような〜。
これは未だ文庫化されていないようだが、服部文祥氏の「サバイバル登山家」と並んで遠からず文庫化されるものと思う。
今日は今日とて大型書店にて「探検家の事情」の文庫本を、20万図と共に買いに出てしまった。
角幡氏には探検行為の追求も引き続きして頂きたいが、この手のノンフィクションもまた手掛けて欲しい。石川直樹氏の「最後の冒険家」と並んで実に面白く読んだ。
我が心漂流する今日この頃、読むに全く適当な本だった。
合わせて、吉村昭の「漂流」も読んでみたい。
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