その上映館である岐阜のシネックスには、朝一からクライマーらしきがゾロゾロと居た、と言うことは全くなくて、お爺が三人にお婆が二人と私の計6名。その五人は優待券か、将又コアなオールドクライマーだったか?
世界屈指の一枚岩である花崗岩「エルキャピタン」を、人類史上初めてフリーソロする話なのだが、
「なぜ、そのような危ない行為を命懸けでするのか?」
そんな初手の疑問からして引っ掛けたままにこの100分のフィルムを観ることになる。クライミング未経験者は言わずもがな、一般の登山者は言うに及ばず、スポーツクライマーにしても理解の外の世界、かもしれない。
無論、私とて理解に苦しむ領域であるが、要領や金銭や効率ばかりを追っかけるでなく、反吐はく様な思いで命を張って行為を成した経験が無いことには到達できない境地に思う。要領を越えて、死ぬ気で乗り越えてようやく見えてくる「光の世界」というのはどんな分野にもある。痒くて不快でクーラーの効いていない汗みどろの世界でしか展開し得ないハードボイルドな領域。(一度目の失敗時に生きたレジェンド、ピーター・クロフトと会話するシーンはヨカッタ。)ボルダーパートでは思わず手を合わせた。
観終わって解る世界にもない。自己表現、一本のアートライン、死と生。ただ、無事に成功してヨカッタとしか言えない。
理解が及ぶ数少ないクライマー、といえば中嶋徹氏が挙がろう。
奇しくも先月の今頃に称名滝フリーソロを成した氏と、本映画主役であるアレックス・オノルド氏とは、2018年春に対面の記事がある【ロクスノ80号、P.22】。
オノ氏にとってはアテンドする日本人の一人としか認識していなかったことだろうが、中嶋氏にとっては極めて希少な”同類”として心中接していたことと思う。
中嶋氏を介して、オノ氏とジェームズ・ピアソン氏とが関係したら、、、何か起こらないか? 何も起こらないか。
折しも昨日、その称名滝記事の載ったロクスノ最新号【85】が届き、その日の内に読んだ。ラカポシ南壁新ルート(登山期間実質一ヶ月の、これは素晴らしい記録だ!)、今井健司氏や一村文隆氏の墓標となったチャムランの北西壁初登、そして澤田実氏の追悼項と、盛り沢山なロクスノだった。ありがとう、big fieldさん。
短い三級ルート(ボルダーグレードでないよ)ででもいい、私も死ぬまでにはフリーソロを体験したいと思う。短いとハイボール、か。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する