白湯? サユヲノモウ? サユウナラ?
当時はちょっと意味が解らなかった。
2002年だかの晩秋山行時に稜線で冷たいガスに捲かれて、冷え切った身体を休めようと小屋を目指していた際の、杉山氏の発言だった。
茶セットも携行しないような、ちょっとした簡易山行のようなものだったと記憶するが、記録に残していないので定かではない。インスタントのコーヒーも、ほうじ茶も煎り番茶も烏龍茶も紅茶も持っていない、けれども冷え切った身体に何かが欲しい。そんなタイミングだった。
骨折で三ヶ月空けたこの一ヶ月の作業は身体にきつかった。また、晩秋とも初冬ともとれるこの時期に標高900m地点での間伐は寒い。風なんぞ吹く日は寒くて作業自体を開始する気とて起きない。
今回の作業は70、57、49というオヂサントリオで切り捨て間伐だった。一番の若手である私が一番高い場所のヒノキ12齢級林分のショバを受け持って、大きくもないチェーンソーで小さくもない獣害ヒノキをバッサバッサと伐った三週間だった。
北面の現場だったが、施業地の西端の尾根はヒノキ人工林と落葉広葉樹との境界にもなっており、そこを「帳場」(作業の起点)とした。
朝一で標高差300m程を喘登し、まずは前日に集めておいた枯れ枝で火を熾し、白湯を飲んで身体を内側から温める。持った湯呑みで両手を温める。温まってくると、不思議なことにやる気メーターが針をムクムクと右に振り出す。翌日は登行中に見つけたクロモジを摘んで白湯に放り込んでみた。フィールダー誌で読んだクロモジ茶であるが、白湯にプラスした山人のちょっとした洒落のような飲料だ。ミカン科の植物なのでそんな味香りがする。眺める黄葉した広葉樹は、私の頭頂部さながら日に日にその葉を落としている。哀しみではない、その移ろいに希望を感じる。無論、頭頂部にも同様に。
その尾根境のヒノキを強めに伐ってやると間伐効果が高いと思われて、元木が齧られた胸高直径四尺程度のヒノキを伐っていった。
作業中、最近観た映画や読んだ本についての回想し、家族の事を想ったり今後の山登りのプランを練ったりしながら仕事に従事する。
やはりこの仕事は私向きだ。まぁ、キツイですが。
昼休みに作ったヒノキ焚きモンの土産も忘れない。
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