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2020年06月11日 17:26全体に公開

猿面

 先月書いたお話。

 今手掛けている作業現場にはもう一ヶ月ほど通っているが、未だまだ終わりが見えないほど間伐面積は残っている。
 その山には今が盛りの海老根があちこちちらほらと咲いており、その花を愛でながら昼食を摂るささやかな時間が蘭好きの私には好ましい。傾向として、海老根は石灰岩地を好むというのは、私に山野草の指南をしてくれた親方のキヨッさの言である。

 ある夕刻、同行の同僚であるSF氏(70)が下山中に言った。「ワシの間伐地にクの字の付く草があった。」と。へっ、嘘? 「咲いとったの?」「いや、咲いてはおらんかったが、あの葉っぱは間違いないぞ。随分前にオレンジ谷いや、水鳥(ミドリ)谷で見掛けたことがあるでな。」それよりも古谷三敏の漫画に出てきそうな容貌のこのSFさんが山野草の、それも希少種であるク草をご存じとは驚きだった。と言えば「macchan90君、ク草知っとるんか!」と逆に驚かれてしまった。山野草は好きだと、前の現場の道すがら言ったや〜ん。人の話を聞いてないんやから、このオッチャンは。「ワシは一時期、山野草に凝っとったことがあるんや。」とのこと。海老根も一昔前には大いに流行った花だそうで。
 翌朝、その場所に連れて行ってもらうと、確かに葉の形がそうである。ただ、以前余所で観察したソレと比べると葉がちょっと小さいのが気になるところである。観察するに、この杉桧人工林は奥山ゆえに植栽後50年は間伐もされずに放置されたその結果、変化しない安定した生育環境が奏功して希少種のランが育成されたものと想像される。この間伐でそれが乱されたとなると些か心苦しい所であるが、弱度の間伐ということでこのまま保たれることを期待したい。
 囲い込まれた保護地ではない、こんな場所で咲くのを見られたら嬉しい。

 またその後日の話。
 同行同僚のMM氏(57)が「海老根とはちょっと違ったヤツが咲いとった。」という。見掛けた場所も覚えていたので作業前に連れて行って貰ったれば、、、、、こ、これは! 猿面ではないか!
 猿面とくれば海老根との自然交配種であるイシズチがあるのではと周辺を歩いてみたれば、、、、、そりゃ無いか。
 しかし、猿面海老根との対面も初めてのことで今後また有るとも思えない機会だったので些か興奮した。単なる海老根とはまた違った気品があり、差し込んだ朝日を背景に神々しいまでの存在感だった。出来れば自分が発見者でありたかった。

 海老根を目にし、作業後には湧水を汲んで帰ることの叶うこんな地で仕事が出来ることを真に幸いなことに思う。
 仕事は辛過ぎなのですが。
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