前回が「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(1960)」で、単身赴任で名古屋に越してきたヨネヤマさんと観たのだったがこれはまあ、いいとして。
今回が「軍旗はためく下に(1972)」という作品だったのだが、前回が前回だったので余り気に掛けていなかった。のだったが、上映最終日の最終回に至り、丹波哲郎主演とあってリハビリ受診を蹴って敢えて出掛けたのだった。
こ、これは、、、、蠍座で上映履歴が無いのが不思議な程の作品である。調べてみれば成程、原作は直木賞受賞作とあった。とはいえやはり丹波哲郎が登場する作品に堕作なし、である。
いや、褒めるべきは左幸子であり、彼女の真に迫る演技は「飢餓海峡」以上のものがあった。海岸で身悶えするシーンや、関連者にすがるように事情聴取するその様や、諦観の有様。
まずもって構成が素晴らしい。「えっ!」「え、えっ!」「えええ〜」と、二転三転の展開に当時50の丹波哲郎もきっと感心したに違いない(ここではないが、丹波哲郎に纏わるエピソードは笑えるものに事欠かない)。
元陸軍少尉大橋忠彦(高校教師)の述懐が、戦争を知らない子供たちの群れる体育館で行われるところが奇妙な効果を生んでいた。果たして檀上には、日の丸が掛かっていた。
師団参謀少佐として登場する千田武雄(三代目中村翫右衛門)が"手のひら返し"の上官を象徴的に演じている。
ニューギニア戦線、熱帯由来の感染症、兵站が滞った結果の餓死写真が強烈であった。戦闘シーン、ネズミを奪い合うシーンも実に生々しかった。私が劇中に居たとするなら果たしてどんな態度をとるのだろう。
なお、音楽は林光が担当している。
もしこれを観に行っていなかったら「アンタ、これまで一体何しにロイヤル劇場通ってたの?」と言われかねもしない程の作品であった。
「野火」は小説でしか読んでいないけれど、カニバリズムも含んだ数少ない映画として本作品は記憶されるべきものだらう。
これを観た後には、世にあることの粗方の事が些末に思われてしまう。深作欣二の代表作でありまた「戦争とは何だったのか」に回答する戦争映画屈指の名作だろう。だからと言って戦争は、体験とするには如何にも重い。
劇場を出ると、連日の酷暑に対する褒美のような雷雨が柳ケ瀬に降り注いでいた。一服して雨宿りしていると、雨雲が抜けた西の空が商店街を照り返して美しかった。戦火のニューギニアにも、こんな夕刻があったろう。
「我々の青春とは一体何だったのか」
歴史に学ぶ、とは一体どういうことなのか。
そうゆう劇場的なのは未体験ゾーンです。なんかスゴいっすね。
軍旗というキーワードで水木しげるの戦記漫画を思い出しました。あれも生々しいっす
水木しげるの体験記も南方だけに重〜いです。
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