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私は好きで日本の近代洋画を観に行くが、美術館を訪れると木彫の観賞にも熱を入れる。同じ彫刻でも木内克(キノウチヨシ)のテラコッタや中原悌二郎のブロンズも好きだけれど、平櫛田中(ヒラグシデンチュウ)等の木彫に殊の外、惹かれるものがある。何と言っても私の好きな素材である木、である。
日本に於ける木彫刻産業の大産地が、訪れた富山の井波であることは意外に知られていない(かもしれない)。その地が、東北でも九州でもなく、岐阜の隣県である富山にあるのだから私は幸運である。
只今骨折療養中に当たり、今だからこそ今でしかできないことを塗り潰す今日この頃で、そんな私のリストの上位に挙がっていた井波訪問が実現した。
彼の地には2013年の黄金連休に家族で訪れており、実に7年振りの再訪となった。
その7年前に入館した「井波彫刻総合会館」で、数ある作品群の中で私の関心を強く惹いた印象深い作品「@」との遭遇があった。実はここの展示作品は同時に販売も行っており、お金を払えばその作品を購入することも叶うかなり得難い場でもあった。で、その作品の値段を見るや、、、、!! 即金で買えるわけもない値が付いていた。他に比して一頭地を抜く作品と見たその像が値においても一頭地を抜くものだったことは自己満足と同時に懐に於いては厳しい存在であった。その時はただ強い興味関心だけを残してその場を去ったのだった。
再訪を前に改めて調べてみたところ、どうやら当の作品「@」は未だ売れずに残っているようであった。今回、改めてその作品を目にして印象に変化が無かったことにまずは安心した。
「@」は琳派も採用する有名な題材なのであるが、当の作品には現代風とも洋風とも採れるモダンな新味が加えてあり、特に題材を表す曲線には「これ以上、これ以外の表現は無いかもしれない」と思わせる美しさがある。欲しい、と考えるのが不遜な気もする、そんな作品である。
総合会館受付で、あわよくば当の作家氏の工房に伺えまいかと尋ねてみたところ、意外にも気軽にその場所を教えて下さった(和紙の里会館でもこういう展開はあったような)。幸いにして至近で、車で数分移動してお宅訪問した。御母堂と思しき方が丁度玄関先にお見えで、聞けば御本人は在宅という。写真でお見掛けした御方が目の前に現れて正直、緊張した。
工房に招かれて、気さくにこちらの質問に答えて下さった。当作品作成の経緯や着想、製作日数、対になる作品の有無について。なぜ素材が檜だったのか。私が林業に従事しているというとチェーンソーアートの話になり(私はやったことはない)、最近はソレにも力を入れているそうだ。
仕事受注の話の際に「私は芸術家ではなく、一職人なのです。」という作家氏の発言が痛く心に残った。私も伐採師として、サラリーマンではなく一介の職人として伐倒している気構えであるので。
白川郷北でトラックの事故現場を目の当たりにし、郡上八幡では土砂降りに遭った。それらに反し、心満たされて帰途に就いた。
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