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「もっきりや」のことは学生時分からジャズ喫茶紹介本で知っていたので、今回の訪問は25年来の思いを達することでもあった。
その本で店が紹介する「とっておきのレコード」のチョイスが他店を圧する渋いディスクばかりで、タダの店でないことは一目瞭然だった。実際に訪れるにこうも時間が掛かるとは、人生とは斯くも短い。
美術館から4,5分で、長く焦がれた店の前へ。12時開店とあったのに、正午着でまだ開いていない! 縁が無いのかと残念に思ったが、階上はスリランカカレー屋とのことで腹も減ったしフラフラと階段を上がる。何故か、ここにはアート・ペッパー(as)の金沢でのライブ時のポスターと、アン・バートン(vo)のサインがあって、流石は金澤! スリランカカレースープはまずまずのお味でした(帰った翌日、真似て作ってみた)。
階下へ降りるとやってました。もう、気ぃ持たせるんやから。
入店するとカウンターに小柄な店主が一人、ぽつねんと座ってござった。初冬の弱い日差す窓辺の席に座り、コーヒーを注文した。レコードではなく「紐付き」ヴィブラフォンのカルテットの演奏が流れる。時間を掛けて淹れられたそのコーヒーは、大層美味しくて冷めないうちに飲んだ。
店主に声掛けして店内を見せてもらうと、まず目に入るのが地元出身の浅川マキの大判の写真で、奥には彼女の直筆の色紙が飾られていた(かなりの達筆だ)。店主に聞けば、マキ氏はペン習字をやっていたそうで、また坂田明(as)とここでライブを幾度か行ったとのこと。ちなみに坂田明は私と同じ、水産学部の出である(ガッコは違う)。
私はこういう時に長居できない性質であり、三十分と居らず店を出た。次に来たらばレコードを聴かせてもらいたい。サミーデイビスjrとか、チェット・ベイカーだとか。
ただ、「もっきりや」という店名に対して日本酒はメニューに無かったような。果たして「もっきり屋の少女」も居なかった。
帰途通りかかった「金沢21世紀美術館」は結構な人だかりだが、やはり客?層が若い。現代美術は彼らの感性に合うことと思う。
石浦神社の酉の市を眺めて、喫煙所があったので一服した。
折角の機会なので兼六園にも立ち寄ってみた。伐ることを思うと結構な木がバシバシと立っている中を、多くの観光客たちがオールマスクで歩いている。丘に位置する兼六園からは、宅地を見下ろす構図である。カエデの類の木立でインスタ映えしそうな写真を大勢がバシバシ撮っている。この手の雰囲気が得意でない私は足早に立ち去った。途中、黄葉した見慣れない木があったので葉を持ち帰って調べてみたら、ナンキンハゼであった。
尚、往復で乗った県道が「金沢〜井波線」とあったので、折角の機会と夏にも立ち寄った「井波彫刻総合会館」へ。夏に御宅の前でも見た、F氏製作の「アマビエ」が玄関で迎えてくれた。例の作品は未だ売れていなかった。何度見ても良い。午前に観た工芸群に引けを取らない木彫である。
何故か車のCDデッキが故障し、長い長い道を無音で岐阜まで。
金澤の秋を感じるに、一番良いタイミングに来られたのだと思う。工芸品を含め、良い目の保養になり実に良い秋だ。
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