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昨夕決めておいたとおりに作業は中止で、雪降る朝を迎えた。私が悪天で仕事が休みになると決まって次女は「いいなぁ、お休みで」という。ならば、バレエもいいけど君も将来、林業やるとイイヨ。晴伐雨読、いや晴伐雨聴。昨日作業中に打撲した左腿が痛む。
雪景色を見ながら、7年ほど前に買ったCDを聴いていたところ、聴き覚えのある曲に耳が吸い付いた。
こ、これはあの「BOPLICITY」ではないかよ！
聴いていたのはバルネ・ウィランが参加している上、ジャズのヨーロッパ盤でも屈指のレア盤として名高い「International jazz meeting/Franco Cerri」の再発CDだった。言われるほどの内容にはなく、バルネの参加も奏功している風にもない。凡庸とは言わないまでも鼻息荒く紹介する程のディスクにもない、高額購入したマニアが自慢の種にする程度の盤である。朝一で、たまには聴いてみるかとトレイに載せて流し聴きしていたところ、ハッとする曲があって、それが件のバップリシティだった。
「BOPLICITY」；ジャズを聴くという人達の中で、この曲を知る御仁は如何程居ようか。消費税率程には居ないと思われる。村上春樹程のマニアなら知っているかもしれない。
「BOPLICITY」はマイルズ・デイビスの初期作「クールの誕生」�┐砲△襦�作曲者のクレジットにはCleo Henryとあるも、契約の関係から母親の名をもじったもので実際はマイルズとギル・エバンズ作という。取り立てて派手な曲でもなく実に穏やかな曲想で、一聴耳障りのいい曲にしか聞こえず印象に強く残ることもない(と凡庸な私は思う)。
実のところ、この曲を知ったのは帝王マイルズに因ることはなく、私がチェックする数少ないブログの中の一つ、ジャズピアニスト野本晴美氏に因った。暑い盛りの昨夏頃に、氏のブログにその動画がアップされた。
https://www.youtube.com/watch?v=iGYg9DRO_l4&feature=emb_title
コロナ禍中の店内での演奏故のマスク姿のソロピアノ演奏で、随分な練習の末の実演だったのではと想像する。
何と表現すればいいのか、聴けば聴くほどのめり込む演奏で、骨折中からこれまで30回以上は聴いたものと思う。読書の片手間に聴いていたら、思わず居住まいを正してしまうようなそんな緊張を強いる演奏、いやそうではなく、すべてを大らかに包み込んで赦す、そんな大きな演奏に感じられた。不思議なほどに胸を打つ演奏だ。マイルズやジョルジュ・グルンツの開けっぴろげな演奏に比して、内省的で練られた演奏だ。6分後半あたりの盛り上がりには思わずこみ上げるものがある。その場に居たら、ゼルキンも静聴するものと思う。すぐ傍ではモンクもキースも聴いている。
マイルズ本人は当時、バップBopの範疇でしか演奏を考えていなかったはずのものを、野本氏が同曲に情緒的というか21世紀らしいモダンな佇まいの新風を吹き込んだ。これにはマイルズも草葉の陰で”ニヤリ”しているはずである。
午後に止んだものの、これだけ降ると山仕事は暫くお預けだらう。31回目の同曲を聴こうかナ。
ただ、折角の良い朝を迎えたはずだったのに、些末なキッカケで家内との第31次世界大戦が勃発した。
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