しかし、吉田展を観終わって満寿夫展示に入室してそんな軽々しい気分は吹き飛んだ。
こ、これは。ちょっと凄いのではないか。63歳で亡くなった池田満寿夫が亡くなる三年前に取り組んだ般若心経を焼物に投影した陶芸作品群が展示されていたのだが、素朴だからこその迫力、それが観るものに強く訴えかける。
でも、この立体造形「佛塔」はもしや、、、。と思って、展示映像を見るとやはり、だった。材料として置かれていた平板粘土を、切って張って直方体にして乗っけただけのものだった。安直な造りだと思って見ていたらやはり、焼成して割れていた。しかしこの大胆にして大らかな造形が池田芸術らしいというか、私が今回心を動かされた要点だと感じた。寡作な芸術家もいいけれど、心の赴くままにジャンジャン創ってしまえばイイノダ。イグルーを、作って宿って考えるyoneyama作品のように。
この展示で私が一番感じ入ったのは「佛画陶板」だったが、序文に寄せた内縁の妻・佐藤陽子と思いが同じだったのは嬉しかった。
池田満寿夫は満州生まれの長野の人。東京藝大に三度落ちて入学を果たせなかった、けれどそれでも世界的な成功を収めたことで知られる。油絵が売れなかったため、画家・瑛九の助言で、色彩銅版画を始めたとは知らなかった(因みにテレビで見掛ける瑛太というのは、瑛九の親族だと勝手に思い込んでいた時期が私にはあった)。
芥川賞作家でもあり、テレビにも出演してマルチタレントぶりを発揮したせいか、芸術家としては軽く扱われている感じも受ける。ただ、館内の(元バレエダンサー・床嶋佳子との)映像にもあったように芸術家として偉ぶる風でもなく、思いのまま生き思いのまま創造したモジャモジャ芸術家として私には好ましく映った。梅原龍三郎のようにただ恐いだけがアーティストではない。
美術評論家としての貌もあり、かつて読んだ氏の著作「美の値段」からは平易かつ含蓄ある表現で藝術への理解を深める一助とした。ここ近日、再読している。こういう文章は中々書けるものではない。
そもそも「パラミタミュージアム」は、これら池田の「般若心経シリーズ」作品を収蔵展示するために開設された美術館であり「パラミタ」は般若心経の“般若波羅蜜多”に依っている。ハではなく何故パなのかは不明。御当地、萬古焼のコレクションもあり、好ましいモノが幾つも展示されてあった。
鈴鹿の山にお出かけの際は、当館を訪問されることをお薦めします。
すぐには判らずとも、後になってその素晴らしさに理解がジワジワと及ぶ、そんな焼物群である。思わず図録を買ってしまった。
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