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流石は開高賞受賞作、面白かったなどと軽口を叩くのが憚られるような重〜く刺戟的な内容だった。問題作!と帯にあるのも大袈裟にない。
著者である濱野ちひろ氏(年齢・学校と、角幡君に近い)の、十年間に渡って受けた精神的肉体的な性暴力体験を下地として、そのトラウマを解消する意味で「動物性愛」を研究するわけだが(京都大学の修士論文)、プロローグからしてエグい。
最近でこそLGBTと呼称される様々な性的マイノリティも社会の中で認知されてきたと思うけれど、殊「ズー」と呼ばれるマイノリティーについて、これが書かれた二年前にどれ程の人が知っていただろう。その、個性的な登場人物が幾人も現れる中で、それら話の流れが順序立てたスムーズなものに感じられる点で、筆力ある文章だと感じた。
「ジュウカン」と言えば今村昌平監督作「にっぽん昆虫記」にそんなワンシーンがあった。
「動物性愛」を比較対象として、人間の性とは、愛とは何かを突き詰めている。性行動に限らず、動物達は我々人間が想像している以上に鋭敏でデリケートな感情を持っていることがこの本から伺い知れた。
21世紀に生きる我々は、一体何を知っていると言えるだろう。
実はまだ世界の半分も知っていないのではないか。
本作品を書き上げた著者に、一条の光ともいうべきカタルシスがもたらされたことが何よりに思えた。
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