それにしても昨日の作業は危なかった。チェーンソーを携え立っているだけで草臥れてしまうそんな急斜面の悪い場で、間伐作業で伐って飛んできた杉檜の梢や枝が身を掠めたこと度々、左腕に負った擦過傷が昨晩の入浴時に沁みた。誘われたものの、流石に今日は疲れで仕事を休んだ。酒も飲む気の起きないほどの疲労感だった。林業関係のみならず、ホワイトカラーの会社員がこんな現状を知ったら思わず白目を剝くであろう、悪辣作業の一日だった。長谷川恒夫でもないけれど、冗談抜きで「生き抜くことは冒険だぁよ」。不確定要素で言ったら脆い岩壁、抜けそうな草付きに負けず劣らずかと思う。公務員の教科書的な建前の物言いが通用しない領域が、ある。
余りの疲労に「虹色のトロツキー」最終巻終章を思い出した。「ごめんよ麗花 少し 休ませてくれ…。疲れた…。」【文庫版;P.270、ノモンハンにて】
こんな行もあった。「人が死んでもそれが当たり前なほど大事なことなんて 世の中にそんなにはないと思いませんか!?」【文庫版;P.259】
その昨日の新聞に、ジャズベーシストの鈴木勲の訃報が掲載されていた。リー・コニッツ同様に、新型コロナウィルスが原因で亡くなったジャズメンとなる。
兎に角変わった人物、いや個性的な方だったらしい。オラウータン、ワニ、小鳥等々を飼っていたそうで、火星人説もあったとか。
当該レコードは、氏の作品で私が好んで聴いたものだった。長く聴くが、聴き飽きしない。同封の、名古屋の内田・東京のいソノてるヲ・鹿児島の中山信一郎の三氏による熱のこもった解説が秀逸である。菅野邦彦の活躍するスタンダード曲も好ましいが、特にA面-3;ロックビートの表題曲「BLOW UP」は印象に深い。ダブルベースの変則的編成だが、鈴木氏の前乗りっぷりにその意欲を強く感じる。函館時代に隣で大音量で聴いていた同じアパート(さかえ荘)の濱田さんは、幼少時にクラシックギターを習っていたそうだが、件の曲が16ビートであることを教えてくれた人だった。40代で「漁業と震災」という大著をものした氏は、11年目という昨日という特別な日をどうお感じだったろうか? 思えば氏は、ライブで請われてジャズベースを弾いていたこともあった。エレベだったけれど。
震災死に、戦死、コロナウィルスによる肺炎死。少なくともそれまでの人生に思いを馳せる時間の猶予が与えられたならいいのだが。
合掌。
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