秋休みで?栃木の実家に二人で出掛ける長男長女を、雨の岐阜駅に送った。車中、最近のマイブームであるウェイン・翔太もといショーター作「Infant Eyes」を土井一郎trioで聴く。高3の長男は、来年の秋には家を出る予定になっている。私やオッカならあと半年で家を出る年の頃だ(共に現役合格だったので)。「子供の眼」には長良川を従える今の金華山がどう映るのだろう? 思えば子が巣立つまでの家族全員での暮らしも実に短いものである。
送った後、折角街に出たので二度目の「緋牡丹博徒 二代目襲名」を観ようと柳ヶ瀬に向かった。ザンザン降りに、アーケードが有難い。時間調節に柳ブラしていると何と!見逃がしたと思っていた映画「木樵」が始まったばかりの時刻である。林業を生業とする私が観なくて誰が観る! 5分遅れで入館して観た。「60歳以上なら1000円なんですが」と言われたのを振り切って。私を何歳と心得るや!
前回観た「緋牡丹博徒 二代目襲名」がジェンダーの観点からツッコミどころ満載だったように、今回の林業映画「木樵」も私にとってツッコミどころまた多いフィルムだった。
映画は山毛欅の伐採シーンからはじまる。飛騨の高山市郊外の天然林を皆伐して人工林に切り替える「拡大造林」が行われており、通称「アベック」を使った簡易な架線集材が画面に映し出された。私がかつて所属した木材会社ではエンドレスタイラー方式を採用し、トラックエンジンを搭載した集材機の駆動力と、長い長いワイヤーの張力と、オカメと呼ぶ滑車を駆使して大きな杉檜をジャカスカ山出ししたものだった。
現在の林野庁は、森林作業道と呼ばれる山道を開設して、林業機械とトラックとを立木のある山に入れて、手早く山出しする方式を推奨している。ただ架線集材に比べると山体に掛ける負荷は大きく、山が荒れたり風倒木も起りやすくなる。本映画では、負荷の少ない昔ながらの架線集材を採用してその技術を映像で目にすることができる(ただ架線集材は、人件費が嵩む)。
笠原木材(株)から送り出された若者三人?が、二世代にわたって林業を営む面家兄弟の元で修業を積む。かつての林業は、伐倒と山出し(架線による搬出)が分業制で、私が伐採班で修業していた頃(15年程前)はまだ別の会社が出しを請け負っていたものだった。伐倒シーンを見るにつけ、面家家は出し専門の事業体だったようだ。矢を打つシーンにヨキ(斧)は一切出てこずにハンマーで打っているし、伐倒はほぼすべてドサカ(下向き)伐りで、切り株に段差もできているはチェーンソーは「喰われ」るはで、ちょっと50年選手の技にはない。メタセコイヤを伐った若い子の方がまだ上手だった。
映画では特段問題提起もなく、また温暖化対策に纏わる林業の役割、何て言うコメントは一切なかったので、単に記録色の強い映画と観た。
現代の林業で一番の問題は、獣害で喰われてしまって若年林が育っていないことと同様に、現場作業員がお爺ばかりで若手が育っていない点にある。私の今居る森林組合の現場作業班も72、60、57、52(macchan90)という”ヒネ”具合である。いつまで経っても私が一番の若手というのでは身体が持ちませ〜ん。
世間では三連休だそうだが明日はまた、仕事だ。
【追記】猟師でもある面家氏が、獣害対策で檻の中の猪を猟銃で撃ち殺す2シーン、ウリ坊三頭をも縊死さすシーンが実に生々しい。これだけでもこの映画を観る価値がある。また、危険な伐倒シーンを至近距離で撮影したことに指導が入ったとのラストの注釈に、、、、笑った。
安全地帯でのうのうと暮らしが立てられる立場の人はお気楽でいいもんだ。現場は実にシリアスなのだ。
映画「木樵」の上映が新聞に掲載されたとき macchan90さんなら見られるだろうなぁと思っていたので待ってましたの日記です
お山のお仕事は全然わからないけど macchan90さんがいつまでも若手、、、過疎っている部落の私がいつまでも「若嫁」と言われるのと同じですねw
森のお仕事の勉強にこの映画は見てみたいです。今になって木こりさんってステキな響きだなぁって思います。「木樵」と書くことも初めて知るくらいの無知ですいません
チェーンソーや斧は持てないですが、現在の職場で使えるようにまずは草刈り機の練習から始めようと思います 私も明日は仕事です〜
過疎地でオッチャンオバチャンが気勢を上げる、何処も同じご時世に思います。若い坊に頼ることなくブラックさんは草刈機で、私はヨキで地域を盛り上げていきましょう。「与作は〜木ぃを〜伐るぅ〜」
プロ杣の方ですよね?
まっすぐな杉の伐採方法しか知らない若手が広葉樹や風雪害木・枯損木の伐倒で大怪我して退職するはずですよ。
痛みきる前の制御可能時に適切な伐倒方法にて伐る 、ですよね?
掛かり木しにくい伐り方とか元切り注意とか矢(クサビ)の使い方を伝える場がないと林業新人50代は変わらないと思えます……?
ロープはまだ未使用ですが畑周りでの伐倒なので植物オイルを最初から使用しています。
段取りつけての安心伐倒、危険を排除しての安全登山によりお互いにつつがなくゆきましょう。
コメントありがとうございます。
技術の継承は本当に難しいものですね。教本通りに教えても、それ以上の対応が要求されることの方がむしろ多いくらいなので。
先週から自分の息子と同年の新人に教える立場になったのですが、何はともあれ基本に忠実に、周囲をよくよく観察するよう伝えているところです。
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