舞台設定は大正五年あたりの伊豆の山(天城湯ヶ島)だが、撮影当時(昭和37年)は皆伐が進んで地拵え後の禿山に若苗が植わっている有様だった。馬車の車輪も木製なら、窓枠も未だ精錬に高い負荷の掛かるアルミではなく木製で、怒涛の広葉樹伐採時代の最中か。
子供たちが素っ裸で川遊びするシーンも現れる。私の時代もそうだったが、昔は子供達だけで結構アブナイ遊びを繰り返して(幾人かが死んで)いたものだった。川の本流を流れ下って遊ぶなんて、今の親が見たら目を剝くに違いない。
曾祖父の妾役であるおぬい婆さんを老け役の代表格・北林谷栄が演じるが、この人以外在り得ないと思わせる。北林氏は当時51歳! 代表格のもう一人、初井言榮もチョイ役で登場したが、当時未だ33歳。主人公の洪作少年にライスカレーを作って食わせるシーンが二度あったが、ライスカレー?
洪作の実父は豊橋の連隊の軍医で、これを芦田伸介が演じていた。その妻に渡辺美佐子。
叔母を演じる芦川いづみに、主人公の洪作(井上靖)が憧れに似た淡い恋心を抱く。
四世代にも積もる親族の血縁と、田舎の因習とが絡み合い、婚前妊娠と結核によって消えてゆくさき子の悲劇を、幼いながらに吞み込もうとする洪作。映画のラストで、伊豆のトンネルを目にしようと行軍する少年の一団が服を脱いで素っ裸になって進む謎のシーンがあったが、先生でもあったさき子を亡くしたその悲しみを振り払うことの象徴に思えた。スッポンポン、で。かなり秀逸な幕引きだった。
なお「しろばんば」とは雪虫を指す。本作『しろばんば』を経て井上靖の自伝的小説は『夏草冬濤』『北の海』(「七帝柔道記」にも登場する)へと続く。
昨日の新聞で一番ショックだったのは、高島屋岐阜店が来年7/31をもって閉店するという記事だった。そ、そんなぁ〜。そんな悲しみの中で、映画鑑賞後に「第24回 北海道の物産と観光 大北海道展」が開催されているその高島屋に立ち寄った。時代によって消えてゆく高島屋に対し、私なりの決別としていつもの大北海道ソフトクリームを舐めた。ソフトクリームも、溶けては舐めて消えてゆく。南無阿弥陀仏。
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