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遭難者は五月連休で同行したウッス君の先輩に当たる方で、聞けば私と同じ業界にいる、という。大学山岳部で目指したミャンマーの未踏峰に初登頂した人物として、その伊藤氏のことは随分以前から私の記憶にあった(切り抜きを保管してある)。工学部卒で林業界に身を置くのはその手の志向あってのことと想像した。雨後の増水した川に行くなんて、という非難がましい声も聞いたがそれは違う。増水したから行ってみようと発想するのも山登りの自由さなのだから。ご夫婦での遭難というのが痛まし過ぎるけれど、当日中に発見されたことだけは何よりの救いだったか。沢登りの魅力は水にあるのと同時に、その恐ろしさもまた水にある。だからこそ私は縦走や岩登り以上に惹かれるのだ、沢登りという行為に。
偶然にも私の数少ない同級生が彼の上司であったこともあり、口利きで直接話す機会が持てるものだと早合点していた。しかし今となってはその機会は永遠に損なわれてしまった。まだまだやりたいことは多くあったろう。そんな夢を聞いてみたかった。
その週には、あの倉上慶大氏の訃報もあって気分の浮かぬ週末を過ごした。合掌。