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劇場を出て、古書店に寄り、先日47年の歴史に幕を下ろした岐阜高島屋前に立った。地域の店は地域住民が育てる、という言に沿えば岐阜市民は米子市民ほどには高島屋を育てきれなかった。駐車場代ケチってショッピングモールにばかり流れるから。それにしても敷地内の喫煙所まで撤去するこたぁねえべ。
先週、K2で遭難した平出、中島両氏の捜索打ち切りの報を聞いた。K2西壁はヴォイテク・クルティカも数度の敗退を喫して未だ登られていない程の壁だそうで、両氏は周到な準備の元で実行に移したものと思う。
平出氏のことは、2002年に日本山岳会青年部が発行した「きりぎりす 5号」で知った。この会報？は岳人誌の年間会報賞を取ったと記憶するが、拙稿も掲載されたことから手元にある（剣沢大滝）。平出氏は東海大学の当時23歳の若者で、クーラカンリ（後に明治の加藤慶信氏はじめ三人が遭難死する）に登ったばかりで、掲載されたのは亜細亜大の大石氏とたった二人で（たったの80万で！）8000m峰チョーオユーに登った記事で（100円/m！）面白い若手が現われたなぁ、と楽しく読んだ。また、陸上の世界から山岳部に移って来て、その身体能力を高所登山に上手く生かしているのも期待させる点だった（谷口けい氏も自転車界からの転身）。
一時雑誌を賑わした日本のアルパインクライマーも亡くなってしまったりガイド業に転じたりで、海外で迫真の高所クライミングを継続しているのはいつしか彼らだけになってしまった。その意味で人類は、真に惜しい人材を無くした。芸能人の惜しむ声はいいとして、残された家族を思うと心が痛む。石井スポーツが主体となって、二人の亡骸が日本の地に戻される日がくることを祈りたい。
なお「きりぎりす 5」の編集人には神宮川で亡くなった木下君の名前があり、海外溯行同人の紹介とその馴れ初めを我々との不動川での出会いを絡めてエッセイ（ではないが）の項に載せている。この会報に記録を寄せている方々の中にも、私が知らないだけで何人もの方が山で街で命を落としているのだろう。南無阿弥陀仏。
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