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原作は「藏」を書いた宮尾登美子。
チラシ文を読んで、あの女流日本画家・上村松園の生涯を描いた映画と知った。そんな映画があったとは知らなかった。日本画は”明るくない”という言い訳は、、、できませんね。お恥ずかしい限りです。
上村松園を語る際に「三都三園」という言葉が出てくる。上村松園(京都,1875-1949)、池田蕉園(東京,1886-1917)、島成園(大阪,1892-1970!)の、京都東京大阪にそれぞれ住まった日本画家三女史を括る語という。上村については多くの資料が残るが、語られることの少ない後の二人については福富太郎氏の著書「絵を蒐める 私の推理画説」に詳しい。なお15章、池田蕉園の項に宮尾登美子が小説「序の舞」執筆の準備段階で福富氏に資料として作品を見せて欲しいと打診する件がある。これぞ生きた資料だ。
松園、蕉園作品はこれまでに京都や東京で観ている。松園は文化勲章受章者で、東京藝大が所蔵する「序の舞」は重要文化財であり日本画を代表する一人だろう。ただ、共に表現に古さが感じられて個人的にどうしてものめり込めない画家だった。その点、島成園の絵からはモダンな匂いが仄かに感じられて、好ましい作品が幾点もある。2022年8月に富山で開催された福富太郎展で間近に観て感激したものだった。
映画を観る前に上村松園の略歴を調べたのだが、絵の師匠である鈴木松年(映画では佐藤慶演じる、高木松溪)の子を宿し、未婚の母として子を産み育てて世間の荒波に揉まれながら女流日本画家として独り立ちしていく様を描く物語と想像したが、悲しいかなその通りの映画だった。
上映初日の最終回だったがまずまずな人の入りだった。老男女ばかりだったが。始まりは「おしん」から。
本映画出演に際して主役の名取氏は原作を読んで心に期するものがあったという、そんな演技だった。先週先々週の三作共に、脱ぐことも厭わず、20代当時としては週刊誌を賑わせた体当たりの演技だったことと想像する。二度目の松溪に負けてしまうシーンだとか、ラストの海岸シーン、だとか。大変に、艶めかしかった。名取が五右衛門風呂に入浴するシーンがあったが、大きさといい形状といいタイルの雰囲気といい、退職までに是非造ってみたい五右衛門風呂だった。
それにしても、師弟関係をいいことに今でいうセクハラ(二度にわたる妊娠)が、古い因習のなかで封じ込められてしまうこと、それをいいことに松溪が松園や新進気鋭の画家西内太鳳(風間杜夫演じる竹内栖鳳?)に対して更にハラスメントを上塗りする醜悪な様に、私の左向こうと左斜め前に座っていた老婦人はそれぞれ退席されていた。それ程に、胸糞悪いシーンだった。母役の岡田茉莉子でなくても、歯軋りしてしまう程に。風間が佐藤慶を、世の代弁者の如く責め立てたが為に、ドツボる悲劇! 一人の男の性欲の果てに、苦渋を舐め続けざるを得ない一人の女。
映画のラストシーンで、師を越えた上でカタルシスが得られる仕掛けになってはいたものの、爽快さの残る映画では決してない。
【尚、産んだ長男(松年の子、松篁)はその後、実際に文化勲章を受賞する程の立派な画家に育ったそうだ。】
名取裕子の代表作、の一本だろう。
次回上京の際には、そんな思いで松園61歳の作品「序の舞」や「母子」を観たい。
◉写真2:名取裕子氏来岐の証拠。
◉写真3の本表紙は偶然にも島成園《おんな》。
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