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地球温暖化の一因である二酸化炭素を大量に吸い上げて大きく成長した杉を、危険木除去の名目で伐る仕事である。危険木と言うよりは、日照を妨げる木を伐り倒して欲しいという要望に聞こえる。
いつもながら、人家側の伐採は緊張の連続である。小さな木ならいい、胸高直径六尺(180cm）、樹高20m超にも育った杉檜を、すぐ横に立つ家や電線に当てないよう伐り倒すスリルといったらない。林業従事者でも、この際どい作業（特殊伐採ではない）ができる人は多くない。久方ぶりの偏頭痛を発症したのはこのストレスに因るのだろう、前夜余り眠れなかったのよ。
もし失敗したら、と考えたら仕事にならない。事業体は伐採保険に入っているのだが、だからといって失敗できるわけでもない。失敗はしません、という類の作業で近所の老人達が見物に来る。
自信を持って伐る、けれど不確定要素をすべて排除することもできない。昨日など、雪の残る傾斜地で伐った昼前の一本(六尺の杉)は、伐倒体勢があまりに悪かった。グラップルのウィンチで牽引して無事倒した伐り株を検証するや「つり」をやや切り過ぎていた。無事、思い通りに倒れてくれたからよかったものの、事と次第によってはYoutube動画にあるように「オーマイガッ！」と失敗して家屋と車をぶち壊していたかもしれないと思うとグッタリして、午後からの作業に掛かる気が重かった。私もまだまだ、である。危ない目に遭った、間一髪セーフだった日にはいつもするよう、昨夕の帰途も酒を一升買って帰った。
正解は幾種類もある。ただ、間違いだけは犯してはならない、そんな仕事だ。
「難しかったら止めて誰かに(仕事を)渡せばいい」と言うのは伐った経験のない奴の軽口である。アンタはプロに成りたくないのか？
来週は更に難関の八尺欅の伐倒が待っている。場も悪い、伐るのは私をおいて他に無い。登山ではなく、日常の仕事でこんなスリルを味わって金まで貰えるのだから言うことない。無事に伐れたら、そんな金でまた酒買って帰ろう。
胸高六尺の杉、樹齢も相当なものだったでしょうね。
八尺の欅は、自分は見たこともありません。
スギが倒れる際、竹をなぎ倒し派手な音がして見学爺さん達は喜んでいました。ケヤキは、度胸の要る伐倒になりそうです。
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