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先々週観た「暗黒街の対決(1960)」とキャストがモロ被りなのは一年違いの東宝映画だから。司葉子は田舎娘として現れるには、華々し過ぎる。ミフネもいいが、私はやはり鶴田浩二派だ。前リーダーの阿呆治部（ジブ）に、不義理な馬鹿山名。
話は極めて判り易い作りで、義理人情と勧善懲悪の筋である。私は黒澤映画の熱心な視聴者ではないけれど、きっと「用心棒」等の時代劇映画はこの範疇にあるものと想像する。
黒澤明が画家志望だったとは知らなかった。東京美術学校（今の東京藝大）を受験するにあたって洋画家の小林萬吾主宰の同舟舎洋画研究所に通い、その受験に失敗しては川端画学校に通ったという。きっと映画の作風に生かされているのだろう。
ここからは関係のない話。
日曜月曜と、土曜に登った奥美濃での雪山山行が繰り返し思い起こされた。
どんよりとした曇天下、ピンクテープを一切見掛けず、誰とも出会わず、そよと風のない稜線を山スキーで歩く快楽、悦楽、愉悦、喜悦。の「キエツ」に、あしたのジョーのホセ・メンドーサを想起して歩く白い世界。「悦楽共犯者」という映画もありました(1996)。
私は北海道から岐阜に戻った2000年以降、奥美濃への山行を敢えて控えてきたキライがある。奥美濃へ行くなら、体力気力の充実しているうちにと、北ア以遠の長く厳しい沢や山を優先してきた。近年、宗旨替えして身近な山にも足を向けだしてようやく奥美濃も歩くようになった。
土曜の山は、こんなにも手近な山にいて静かで心躍る山歩きが出来る再発見の好機だった。私の「奥美濃時代」の到来か。山は思索の大らかな器、である。
一時間後の自分が果たしてどうなっているかの不安な想像をした上で、サイコロを振るようにスキーで雪の沢を下降する一歩を踏み出したあの瞬間を、暫く味わっていたい。私にとり、山は愉快な土俵、である。
写真��:春めいてくると、近所の野良猫の訪問を度々受けるようになる。
奥美濃は一種麻薬のようなもので、一度取りつかれると抜け出せなくなりますョ。
わたしが30年間せっせと通ったのも、何かに「憑依」されたからです。日比野さんもそうでした。兎谷、此の金なんてところは年に四・五人しか歩かないが、味わい深い谷です。日比野さんは「奥美濃は全て歩いたように錯覚していたが、まだ半分以上残っている」と各務原山岳会の会報に書いていました。
以上。
ある意味に於いて、私がせっせと登ってきた山や谷は他人の評価を得てきたブランド漁り、とも取れます。一通り、ざらっと経験した上で今回感じられたのが「新鮮でここにしかない奥美濃」味でした。
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