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ということで、乗鞍から下山して以降気に掛け続けた一週間の上映期間の金曜最終日に、半ドンで観に出掛けた。篠田の代表作の一つ「乾いた花(1964)」を。
音楽に武満徹のクレジットあり。当時21歳の加賀まりこに負わされた役割は些か大き過ぎたのではないか。主役は池部良以外には考えられないほどのニヒルさだった。何にしても池部さん、タバコ吸い過ぎ！ 大変早口の「馬鹿野郎！」を二度言った。
いやはや、ヒヤリとする映画だった。こんなのは金原ひとみの「蛇とピアス」以来だろうか。石原慎太郎の原作に負うところ大だろうけれど、時代に先駆けた非常にスタイリッシュな映画と見た。虚無という深い穴を埋める博打、女、酒煙草、ドラッグ、暴走、そして殺し。昨夏読んだ「太陽の季節」に通じるものがあったのは当然のこと、死への接近という点で前出の「蛇ピ」も観ていて頭に浮かんだ。
いつ登場するのか？と気を揉んだ山茶花究は、ラストでカンタータをバックに刺殺される役だった。オーラスの「かつえる→飢える」は、終劇して明るくなって直ぐにスマホで調べた。
フランシス・コッポラ監督が本作を熱愛していたそうで、これをヒントにゴッドファーザー�靴任了�人シーンが撮られたとか。また、マーティン・スコセッシが、賞賛しフィルムを買った逸話まであるそうな。映画鑑賞を趣味とする向きには必見の作品だろう。「心中天網島 (1969)」は更なる傑作と言う。
それにしても「凄い偶然デスネ。」と窓口の姉さんに伝えた。ロイヤル劇場で篠田作品が掛かるのが稀ならそのタイミングで飛び込んだ訃報、掛かるのが東京でもなく生地の岐阜というのも実に不思議な縁である。
虚脱感で劇場を出て池部バリに煙草を呑んでいたら、向かいのパン屋から「ばり〜ん」とガラスの割れる音が！ 何の演出かと思えば、今し方一服していた前を通過したばかりの電動車椅子のオジサンがパン屋入り口で操作を誤ってバックしてしまった結果の分厚い電動ガラス扉破壊音だった。誰も悪くない、悪いのは山茶花究、である。
一週間前の今頃、下手をしたら死んでしまうような状況にあった。こういう映画を見るに、登山というのも虚無を埋めることの叶う重い体験の一つなのかもしれない、と感じた。
先を越されてしまったが、わたしも篠田正浩のことを書こうと、きのう下書きが終わったばかりです。「ヒミコと呼ばれる女」「桜の森の満開の下」「少年時代」「スパイ・ゾルゲ」ならいくらでも書けそうです。きょうの午後ロイヤルに行ってみます。
岐阜が生んだヌーベルバーグですから、ロイヤルで追悼特集を組んで欲しいですネ。
そう全く同感です。篠田監督追悼、二ヶ月ぶち抜きで上映すれば、ロイヤル劇場の名も全国に知れ渡ること必定に思われます。いやぁ、この監督の凄みを知らず生きてきたことを恥じる思いです、岐阜県人として。県庁で、後輩に当たる江��知事主催で上映しても良いくらいです。
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