|
言論の自由、出身五民族の平等が保証され、全東アジアのエリートが選抜され集まった満州建国大学の出身者たちのその後を聞き取り書いたルポ。昨年度の開高健賞受賞作です。
私の場合は漫画の「虹色のトロツキー」で初めて知った青春群像です。建国大学の関連書は本当に少ないとのこと。
http://1000ya.isis.ne.jp/0430.html
2010年ころの取材で、6年後の今はほとんどの人がもう亡くなっていて、ぎりぎりの証言集でした。国策、植民地侵略という負の側面だけから満州に関わると見えにくい。そのためいまだに個々の証言者の声が語られにくい。
善意と理想と熱意に燃えて渡満し、そしてその傀儡国家の矛盾をだれよりも知ることのできた若者たちの話だと思います。
国内の生き残りへのインタビュウがどれももいいし、中国、朝鮮、モンゴル、台湾、ロシアの卒業生への取材も巡っている。盗聴と取材妨害にあった中国取材。聞き取りが無理やり強制終了に終わりながらも、その後の「それはあいつの予定通りだ」という旧友李のネタばらしが痛快でした。とことん若い時に付き合っているから今でも何考えているかわかる。当局の言論統制に80年も付き合ってきたのだ。中華族ってこうでなくちゃやっていけないんだな(p225)。地獄の司令官、辻正信に関する些細な李青年の回想も興味深い。人にはいろんな側面があるのだ。
元朝鮮族学生で、韓国首相まで勤めた姜のことばで、「あのころは若かったから」というのが一番よかった。20歳前後で寝起きを共にし飯を分け遠慮なしに付き合い、何もかも討論する寮生の付き合い。僕にも覚えがあります。人生のかなめだと思う。ここに共感(P219)。
白系ロシアンのジョージが馬に乗って鳥を捕まえる場面が美しすぎて、ため息が出でました(p263)。
スミルノフがアルマトイの空港で塾歌を歌って旧友を歓迎するところ、わかる。もう、寮歌祭だ(P277)。みんな長生きしてくれて本当に良かった。
2017年。これからはもう本当に、あの戦争を大人として経験して、語れる人は、居なくなっていく。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する