【読書備忘】戦場の秘密図書館

政府軍の狙撃兵に撃たれるかもしれない廃墟で、本を救い出す。2012〜2016、四年間、アサド政権軍に包囲されたシリアの町で、食べ物にも困る暮らしの中で普通の市民たちが朽ちてゆく町中から本をかき集めた秘密の図書館の話。
図書館は、秘密だった。独裁政権は、国民が本を読み、心を豊かにして理想の社会をゆえ見ることを嫌うから。
町の陥落で、本と、図書館と別れを告げることになった人たちの心境が辛い。
僕にも、時々夢の中に出てくる、探し求めていた本に出会うシーンがある。特定の書物ではないのだけれど。うちには、この世に何冊もない貴重な本もある。何度も読み返す本もある。今の日本で、本など無くしたらまた買えば良いかもしれないけど、抱きしめたくなる本との別れ、というのがわかる。

本とは、雨のようなもの。全ての人の心に降り注ぎ、豊かにするもの。

訳者の小国さんは随分前にお話ししたことのある面白い人でした。
BBCラジオの取材者が、遠隔スカイプだけで現地の若者たちに取材し続けたリポートの本。

シリアの内戦は、まだ終わっていません。