昨年新書大賞を受賞した「日本軍兵士」を昨日読んで、その境遇をより具体的に知ることができました。まさに、いま読んで良かった本です。
https://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-214647
▼戦死者270万人の6割に登る、弾に当たって死ぬ以外で死んだ日本兵の死に様を、延々読ませてくれた。華々しくない日本軍兵士の苦境を数字と多くの文献から淡々とまとめてくれる本。 日中戦争が始まる前は徴兵は男子の20%程度だったが、1940年すぎるとそれまで兵とされなかった男たちが戦線に送り込まれた。医療、歯科、精神科、糧秣、パワハラ、休暇、装備、どれもケアなし。軍といえるクオリティではない。祖父が中国戦線へ投入された時期と場所を知り、この本の状況をあわせると、本当に絶望的な時期で、多分飯盒は行李に、水筒は竹になり、背嚢も背負い袋、靴も満足に無かったのではないか。妻と子供5人を残して応召。この本で祖父徴兵の実相を初めて知ることができました。
▼村上春樹の「猫を棄てる」、今年春の出版で、亡き父のことを書いた短い本とのことで図書館でかなり長く待ち、昨日お知らせが来て今日読んだ。
驚いたことに、村上氏は1917年生まれの父が1938年に徴兵で中国戦線のどこを転戦したかを、同じく軍歴証明書で調べて書いていました。そして、やはり「日本軍兵士」からの引用で、当時の兵員がどれだけ厳しい状況で行軍したか、過酷さを書いていました。
マラリアが蔓延し栄養失調で痩せた体で40キロもの荷を背負い、日に何十キロも、最終的に何千キロも大陸を補給無しで徒歩で行軍した。
登山愛好家ならこの数字がどれだけ無茶なものか、わかりますよね。
ここ数日に読んだ二冊の本が、最近私が軍歴証明を取り寄せて初めて知ったことと、関連していて少々驚いています。二冊の本は、特に関連を知って選んだわけではなく、何日も前に図書館に予約注文をしていたものがたまたま届いたタイミングでした。
米山さん、お祖父さんの軍歴のお話を読み、今回の二冊の本との出会いがさらにお祖父さんの当時の姿、日本軍兵士の姿をいっそう印象的に想像できたというお話、何よりでした。
「日本軍兵士」は2019年の新書大賞でしたね。私もこの春先に読みました。村上春樹はあの吉田さんの「捕虜斬首」のところも引用していましたが、戦争が個人の心奥深く巨大な傷を残すことを、改めて思い知りました。小熊さんの「生きて帰ってきた男」も併せて、戦争の真実は今後も書かれ続けねばならないもの、読みつなげなければならないもの。大賞をとり、多くの人の目に触れたこともよかったです。
2020の新書大賞だった「独ソ戦」も併せて読んだのですが、アレクシェービッチの「戦争は女の顔をしていない」と一緒に読むと、この独ソ戦こそ「第二次世界大戦」の本質なんだなあと思った次第。それは旧来の軍同士の戦いではなく、人種、民族、国家の「絶滅戦争」だったのだと。
村上春樹は、「一人称単数」を読みたいのですが、まだ近所の本屋さんに入っておりません(今日探しに行ったけど。)騎士団長殺し以来3年ぶりの新作ですが、なんとコロナのため「販促は控えめ」なのだとか。田舎までは届かないかも
やっぱり、日本軍兵士読んでますね。こういう本が読みたかったです。登山愛好家は、山で荷物持って飯炊いて歩き回るから、どれだけ無茶な戦争だったか、これを読んで骨身に染みますね。
私も独ソ戦よみかけです。数字並べると、こっちの方が上手というか桁違いで。最近ロシアの地方自治体名やローカル地理をかなり詳しく覚えているので、独ソ戦の戦場になった地名がスラスラ頭に入ります。今日の新聞で読んだのですが、「女の顔」が最近漫画になったそうです。
「一人称」も、また図書館の順番待ちに並んで見ますか。
yoneyamaさん、こんばんは、興味深い日記の数々楽しく拝見しています。
実はこの夏に亡くなった私の父も北支に出征しています。
父は無口で戦地の事は、ほとんど語らず、南方送りになる前に支那に行った方が安全だからと志願したのだ。人を撃ったことも悪いことをしたことも無い。ソ連が来てからは自分が生きて帰る事しか考えられなかった。シベリアや支那に抑留されていたらお前も存在してないと言っていました。
死んだ英霊がお経を上げてくれと言う、とかで毎晩、読経し1時間に10回は食事の時でも「波阿弥陀仏」と唱えていました。壊れてしまっていたのかもしれません
1923生まれの父の場合は時期、場所的にそれほど過酷ではなかったと祈りますが、
遺物を片付けていると、部隊の記念誌が有り、連なる城壁と荒野、その中を砂塵を上げて果てしない地平線に向けて行軍する写真が有り驚きました。
叔父は17歳で特攻ボート乗り、本当に過酷な時代だったのだと思います。
戦地の事を聞くことは気の毒に思えていたし、今となっては尋ねることもできません。
すみません「北支戦線」のキーワードが父と重なり長文になってしまいました。
父、叔父をしのび、ご紹介の本を読んでみたいと思います。有難うございました。
感想をありがとうございます。
本人が何も言わないし、負傷もしていなければ、戦争に行っていない人は「それほど過酷ではない」戦場だったなどと思って安心したくて、考えないようにしてしまいますね。でもそうとは限らなかった。本人でさえ「俺はまだマシな方だったし、大したことじゃなかった」と思いたかった面もあるかもしれない。でも、毎日お経を唱えないではいられなかった。こうでありたい、こうであってほしい、ということよりも、抑えられなかった心の不安定が思わぬところに出ていたのかもしれない。
戦争「体験」は、まずは身近な人の体験の追想から始めることだと思いました。
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