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2014年11月13日 18:06読書 書評全体に公開

読書備忘録 日本人の身体 安田登 ちくま新書

本を書くほどの人のツイッター中にはとてもおもしろいものがあります。そんな一人の能楽師安田登さんの「日本人の身体」は、気になることがたくさん触れられていて、興奮する一冊でした。
身体とは何か?近代が失った人の心身とは何かについての書です。
言葉の語源を説明し、古典をたくさん引用し、わすれてしまっていた昔の概念を丁寧に説明します。ツイッターでもヘブライ語もギリシア語も原典を楽しそうに読んでいるようでした。古代中国の造詣も深く漢字の成り立ち、やまとことばの成り立ちがいちいち触れられていてすごく面白いです。
山登りと身体について考えていることを照らして読みました。以下備忘録です。読了してまとめたくなりました。

1「身」と「からだ」
西洋文明に触れる以前、日本ではからだという言葉ではなく身といって、心身をわけていなかった。日本人は体と心を分けない。からだの語源は殻、ぬけがら、屍をさすことばだった。今は体を外部化し、不調のときに、医者にゆだねてしまう。
はだかは江戸時代まで恥ずかしくなかった。古事記の中のはだか。浮世絵の中の男女混浴のおおらかなセリフ。
能というのは死者の声を聞く芸能。日本はそんな芸能が650年も続いている、死者との関係を大切にする国だった。世界最古の現存芸能。

2曖昧な身体
能は主客の境、時間の境、生死の境があいまいな芸能、日本文化は線を引かない曖昧な領域を大切にしてきた。内でも外でもない縁側や軒下。屏風や障子一枚の建具。能舞台の橋掛かり。能や和歌の掛詞。
ころころ変わる「こころ」と通奏低音の「思ひ」。意識と無意識。
交渉、ディベートではない、「文殊の智慧」は、同ではなく和。相手を負かして同じ意見にするのではなく、参加者全員が驚くような新しい知恵が生まれる。参加者全員のどの自説でもないのに、みんなが「それが言いたかったんだよ」となる、みんながもともとは持っていた知恵。
かんがふ(考える)の語源は「か身交ふ」
あわいという言葉は「会う」がベース。人と会うが、必要以上は見て見ぬふりをして見えない境界とする。
男女の境もあいまい。女装して敵を倒す英雄ヤマトタケル、好色一代男の関係相手は女が3742人、男が725人。

3溢れ出る身体
風景だけをうたった日本の詩歌は、特定の「こころ」ではなく、聞く者皆の「思い」に触れる。西洋人の作る和歌俳句には、「私」がどうしても入ってしまう。
「景色の中に感情が隠れている」のは、私自身と景色との間の境がないから。
自然の中を歩くといい考えが浮かぶことがある。自然と自分内面との「あわい」に自分の存在があり、頭も使えて、身体の感覚も使えて、ちょうどいい感じでいられる。
もの思い 漠然として心の深層にあるもの 普遍的な心的機能
あくがれる=かれ(離れ)自分の身体から何か(心や魂)が離れてしまう。幽体離脱、夢に出る。
死者の声 死者は「存在するとは別の方法で」生きる者たちに触れる」
あぶれ者=溢れ出る者 過剰の人は境界を溢れ出てしまった人、日本の英雄スサノオ、ヤマトタケル
自他の境界があいまいな人々の間にあいさつは不要。「こんにちは」も「ニーハオ」も近代の産物。あいさつは自我の殻をやぶる呪文。
「あしらう」は「あわい」の動詞形。「饗へ・しらう」(もてなし・互いにしあう)=もてなして飲食をともにすること。ともに食事をする「あしらい」はきわめて「あわい」的行為。
皮膚という外部に守られた粘膜という内部が人の体。植物の体はその逆で「動物の腸管を引き抜いて裏返しにしたもの」だから、植物は環境そのものであり自然の「生物的な部分」である。動物は、性と食に関する出入口だけ(口、目、肛門、性器)が粘膜であり、そこを通してだけ外部の宇宙、環境と交感する。食事をともにする「あえ・しらう」は、互いの内蔵された宇宙との交流である。

4ため息と内臓
環境と直接つながりたい欲求。宇宙や他者と直接的な関係をもてる植物のように動物には根源的に殻を破り宇宙と融和したい欲求がある。
禊(みそぎ) 身削ぎ 身体の粘膜化
あい見む 目という粘膜での交流
断腸の意味 切腹の意味、腹を割る、腹が立つ、腹の虫がおさまらない
はらわた こみ上げる思いは下腹部あたりにある
あはれ=ああ、という下腹からの溜息
人は呼吸をコントロールできる唯一の動物。他人と呼吸を合わせないとクジラや猛獣の狩りはできない。歌を歌って息を合わせる。息は心もコントロールする
息という字、心という字は古い農耕民由来の漢字ではない。
楽という字は木の上にされこうべを飾ったもの。歌(合唱)のうまい部族は首狩りがうまい。下手だと返り討ちにあう。
多くの芸能は過去の事を歌うが芸能者は過去の人に憑依され過去の人として過去の事を語る。過去を丁寧にトレースすることによって自然に焙りだされる未来を予言する。それが芸能の力。
「心」という漢字の原初の形は男性性器、「こころ」より深くに「思い」がありさらに下に「心(しん)」がある。古代中国の内臓感覚は、腹より下のあたりにあったのかもしれない。
古典芸能の世界では老醜ではなく老成
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480067944/
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