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シーズンになると「山岳救助隊員」が装備点検をしたり、山岳救助訓練をするニュースはあります。HPでもPRしてます。でも「登山者の皆さん、気をつけて登ってくださいよ」というためのアピールのようなもので、例えば周辺各県のような、年中あるいはシーズン通して山の仕事でヤマ経験を磨いている隊はいません。年に数回の講習や訓練だけでは山の現場力はつかないという事を、登山する人ならよくわかると思います。隊員は登山道上での力仕事はがんばってくれますが、多くの場合遭難者が見つかる道の無い谷底、雪山、藪山などに自信を持って入れるスキルのある隊員はほとんどいないと思います。
その理由はわかりませんが、多分、穂高や剱や谷川岳みたいに、70年代から80年代にかけて都会からのクライマーが競って押し寄せて遭難しきりになったような歴史的フィールドが、山梨県域には無かったせいかもしれません。山のスキルを身につけるには、普通の公務員警察官みたいに数年で転勤していたのでは無理です。谷川岳の馬場さんみたいに、山の顔になるぐらい続けている人が居なければ。そういう仕組みがこれまで無かったのだと思います。
山梨県には穂高や剱や谷川みたいな山はありませんが、首都圏に近いため、ゴールデンウィークの頃になると、たくさんの人が山に登りに来て、行方不明になる人が何人もいます。昨年の今頃、こんな日記を書きました。
http://www.yamareco.com/modules/diary/826-detail-72414
しかし家族から連絡があれば、十分な山岳経験がなくても、警察は捜索に行かなくてはなりません。柔道や剣道は強いけど、山登りには全く馴れていない管内の若い警察官が集められ、借り物の登山装備で苦労して探します。危ないし気の毒です。警察官だってゴールデンウィークに、小さな子供とデズニーランドに行く約束をしていたかもしれません。
私は警察の山岳救助体制が他県よりも充実していないからと、それを責めるのではありません。山の失敗は遭難者自身が負うものであり、救助を期待して登山するのは筋が違うと思うからです。警察にはもっとがんばってもらいたい仕事が別にいくらでもあります(凶悪事件未解決のヤマとかオレオレ詐欺のヤマとか)。救助を頼りにするような結果は少なくとも登山者自身が負うべき事であって、救助捜索の質を隣県と比較などしては、登山行為そのものが世間から疎まれると思います。ですから県警の救助体制は別段今のままで構わないと私は思っています。穂高、剱、谷川の無いほとんどの県警はみなそのような体制でやりくりしているのではないでしょうか。
只、漠然と、救助隊ががんばってくれていると思って山に来ている人がいるなら、事情を知って少し緊張を促したいと思いました。
以上の事情を山梨県に住んで何年か県内登山者と山登りをしたりして知りました。県外では報じられないけどたくさんある小さな遭難記事の当事者は圧倒的に首都圏の人です。東京1300万人、神奈川900万人、埼玉700万人、千葉600万人、茨城300万人、群馬、栃木200万人で山梨県民80万人です。
確かな山仲間もなく、計画書も無く、家族に対する説明も不十分に、山梨県の山中で行動不能になり、ヘリコで発見されなければ、助かる見込みは無いということをどうか忘れず、それでも楽しい山登りをしていただきたいと思います。