工程表の最初の目標だった「水棺計画」が事実上、失敗しました。1号機の状態はいぜん、危険な段階が続いていることがわかりました。12日付のコメント(下記参照)に書きました。
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(1)
浜岡原発は東海地震の予想震源域の真上にあります。登山者にとっては、中央アルプスと南アの南部が近距離にあります。
浜岡から半径50キロ圏の人口は200万人を超し、国内の原発では最大の周辺人口をかかえています。風向きでは名古屋と首都圏が汚染エリアになる危険があり、事故の影響は大きすぎます。
建設時から震災にもっとも弱いと言われてきたのが浜岡でした。中部電力は、「海側に11mの砂丘がある」ことで守れるとしてきましたが、今ではこの弁明はむなしい。津波は、高さ10m以上、海中に深く基礎を打ち込んだコンクリートの大堤防をも、各地で破壊しました。砂丘は、簡単に乗り越えられるし、砂は最初の一波の満ち干きで、流されるでしょう。
原発の建屋は標高6mにあり、主要施設は福島同様に海面下になります。
浜岡原発の津波対策の泣き所は、2つあります。
1つは、原発の脇に河川があり、海側に人工的な防波堤を築いても、川を遡ったり、周囲の低地に上がった津波が、背後からも襲いかかることです。
2つめは、現地が遠浅の海で、原子炉の冷却水を熱交換で冷やすために必要な海水を、敷地からはるか600mも先の海へ引きこんだ配管で、くみ上げる方式をとっていることです。
この配管は原発の命綱です。配管は地中に埋設され、海底へと導かれていますが、地震動で損壊したら、アウトです。冷却の命綱の配管は、地盤が液状化する砂地盤の中に延々と伸びています。
大地震は万一ではなく、かならずきます。
経済的な損得を考えても、原発震災はわりがあいません。
ただ、原発の停止・廃炉は、準備した提案でなければ事はうまく進みません。
浜岡の残る3基をまとめて停止の案もありますが、この夏をのりきる算段をつけながら、順次、廃炉という計画的な進め方もできると思います。
必要は発明と工夫の母です。膨大な原発経費を、太陽光、風力、天然ガスにふりむけましょう。今年はここまで、来年の夏にはここまでと、十分にそなえる前向きな対策を、と思います。
菅さんの提案は、この夏と来年の代替案をちゃんと提案に入れればもっと良かった。
もう一点、震源の真上の浜岡については、根本的な安全策は無理です。一時的な停止では中途半端。順次、計画的に廃炉と提案すれば、さらに良かったと思います。
ちゃちな堤防つくって、数年後にまた運転再開では、悪夢です。
日本海側の危うい原発、全国の老朽原発を不問にするのも、変。
計画的な脱原発の大方針をもつべきです。
この夏、各電力会社間の電気の融通も制限が大きくなります。都会はこの夏はきびしくなります。
被災地を思って乗り切るしかありません。
(2)
「原発の事故率」というものを、計算してみました。
「日本では万万が一にも、原子炉の核燃料が溶融・飛散するような苛酷事故は起こらない」というのが、電力会社側の宣伝だったからです。
世界の原発で商業的な発電用に運転されてきたものは、約450基。
日本では、56基。
苛酷事故はこれまでに、順に、アメリカ1基、旧ソ連1基、日本は原子炉に限れば3基ですが、福島の4号機は使用済み核燃料による水素爆発まで起こしているので、これも含めて4基。計6基。
世界における苛酷事故の確率は、1.3 パーセントです。
日本では、 7.1 パーセントです。
(3基で計算しても、 5.4 パーセント)
事故の影響を思えば、とてつもない高さです。
ちなみに、交通事故の死亡事故は、日本には約7000万台の自動車が登録され、約7000万人の運転免許所持者がいます。死亡事故に限ると、年に約1万人。その確率、年間に車1台当たり、
0.014パーセント。 (1事故で複数の死者を勘案すれば、さらに低い。)
原発の方が30年運転するとしても、この、現代の超大型装置の事故率は、かなりまずい。高すぎます。なによりも、苛酷事故を起こしたときの社会的影響の規模がまるで違います。
世界の原発は地震の震源には立地していませんから、事故原因は100パーセント、人為ミスで起こってきました。ですから、世界の原発では、事故を起こすのは3、4基が同じ敷地にあるうち1基だけでした。
ところが日本では、並んで運転中の原子炉は全部、いっぺんに苛酷事故へ進む。
今回も福島はもちろんでしたが、宮城の女川、青森の東通と再処理工場と、どこも当分、すぐには動かせないほどの被災を受けました。
このままでは、次の事故も日本ではないか。それも同時並行の多重事故として引き起こされることになると思います。
(3)
この情報の前々号で取り上げてきましたが、いよいよ正式に東京電力は事故の被害の賠償の免責を主張してきました。
想定を超える天災なのだから、賠償責任は免責される、という主張です。
そのため、東京電力の重役の方と、福島県の避難地域の住民との対話では、「お気持ちを汲んで、できる限りのことをやらせていただきます」。何をやるのか、まったく意味不明。
何度、「はっきり賠償を約束してほしい」という声が出ても、これ一本で東京電力は対応しています。
私は一つだけ言いたい。
運転して、事故を起こして、自分でその責任を負えないのならば、始めからそんな危うい「装置」は、運転する資格はなかったのだ、と。
自分が手に負えないものを、安全だなどといって使わないでほしい。
(4)
こうして、当座の生活と経営の立て直しのメドも立たないまま、避難した住民の「一時帰宅」が10日から始まります。
事故から間もなく2ヶ月。
あの避難から現在までに、福島ではお年寄りの方を中心にわかっているだけでも約50人の方が、亡くなられました。その多くは入院や介護のさなかにあった方々でした。
災害に遭われた方々は、1、2ヶ月、仕事の算段がつかないでも、メシの食い上げになりうる。運転資金も生活資金もなくなる。
一方、放射能は、事故当初に大量に排出されたヨウ素(半減期8日)から、セシウムやストロンチウムなど数年、数十年単位の蓄積性の放射性物質が、長期の被ばくの累積要因にとして、主役になりかわってきています。
人間の経済生活や体調の時間スケールと、放射能の減衰の時間のスケールは、かみあいません。
原発震災の独特の進行を、私たちは初めて目の前にしています。
福島県では今日もまた、コゴミやタケノコの放射能の基準値超えが拡大しました。
飯館村の計画避難も、実施へむけてきびしい話し合いが続いています。
乳牛は避難を前に全頭を殺処分することが決まりました。
ある酪農家は、今日、処理場に出す6頭の乳牛から最後の搾乳を行い、1頭1頭丁寧に体の汚れを落としたとのこと。
「ずっと一緒にいれなくてごめんな」と牛に声をかけながらトラックの荷台に運び、泣きながら見送ったとのことでした。
浪江町の3月16日いらい(それ以前の大量放出はふくまず)の被ばく線量はついに50ミリ・シーベルトを超えるところがでてきました。2ヶ月で。
4日前、1号機については初めて原子炉建屋に人が作業で入ることができました。今日入った作業員の被ばくは、多い方で10ミリとかなりの量。建屋の一部には700ミリシーベルトを超えるエリアも確認されました。
3基の安定冷却は、まだ試行錯誤が続いており、私はいまの対応には強い疑問があります。
とはいえ、事故開始から2ヶ月を期に、これからは毎週、毎週、確実な前進があるとりくみを期待したいと思います。
tanigawaさん、おはようございます。
浜岡の停止が決まり一歩前進と喜んでいます。
私としては3月に静岡県知事に提言しておいたかいがありました。
なぜ浜岡だけなのかという声が出ていますが、これを総理の口から論理的に説明するのは無理があるように思います。
しかし、大きな流れが生まれてくるものと期待しています。
dari88さんへ
浜岡は、正確には、一時停止ですね。防波堤などの諸措置をとれば、その時点での政府の意向で再開もありえます。
今後、中部電力が最終的にすべて廃炉を決めれば、やっと最悪の危険な原発は、止まります。
それでも、今回は一歩前進でした。
世間には、原発は悪だが、ないと電気が確保できないという「通念」があります。
先週は、「産経新聞」のエネルギー問題の担当編集責任者でさえ、原発なしでやっていけると、書いていたくらいなのに、世間ではまだそういう主張は少数派です。
もう一つの「通念」は、日本の電気使用量はこの先も、いままでのように増大するというもの。
これも錯覚です。電気の使用量を減らす家づくりや、電気製品開発、生活習慣をひろげるべきです。人口も減るのだし。
スズキ自動車の会長さんは、以前から原発依存の見直しをいい、今回の浜岡も「正しい判断。操業は助け合ってやりくりしよう」と発言されました。
ソフト・バンクなどもそうでしたが、こういう声は道理がありますから、じわっと広がると思います。
製造業が止まる! などとも言われますが、今後、日本の電力料金は上がります。供給も、自然エネルギーにシフトすれば、黙っていても電気が必ずくるという状況ではなくなる。
企業も、いま天然ガスタービン発電を工場に設置し始めています。コストも見合う。家庭も作れるなら電気は自分でつくる。
福島の事故のあと、首都圏では、東電に逆に電気を売る製造業やビル会社も広がりました。
自治体だって、環境に恵まれたところは、小水力、風力、天然ガス、公共施設の太陽光、なんでもとりくまないといけません。
それらの試行錯誤の先に、「脱原発」がある。
いま原発は54基のうち30基前後が止まっています。
それで真夏でなければ、ぎりぎり間に合う。
脱原発の目標は、遠いところにあるのではなく、身近な努力を重ねた先に、もう見えてきていると思います。
未来がないのは、ウランを浪費して、このままでは30年ももたない原発の方です。
tanigawaさん おはようございます。
「浜岡」停止?一時停止?は菅首相の
パフォーマンスのきらいは否めませんが こうやってコメントを書いてる瞬間に起きるかもしれない「東海、東南海、南海地震」を考えると過去の自民党政権も含めて誰もなし得ない英断と評価します。
これがエネルギー政策の転換、全原発停止、廃炉へ繋がって欲しい。
tanigawaさんもおっしゃってまずが
「東電が天災を言い訳に」
原発事故の賠償の免責を言い出して、
やっぱりか・・・ 核をコントロールできるなんて幻想ですよ。
話が支離滅裂ですが放射性物質は
海で薄まるから大丈夫?
昔 ミナマタでも「チッソ」が有機水銀は海水で薄まるから大丈夫って言ってあの取り返しのつかない公害を引き起こしてます。そういったことから何も学んでないように思えて
>原発は必要悪の通説
それが盛り上がってくれることが電力各社の狙いでしょうが
もし全原発が停止すれば確かに一時的には計画停電などの
不便にさらされるかもしれません
製造業も海外に流出して景気もさらに悪くなるかもしれません。
でも そうなったとしたらその中から新しいものが興るはずです。
まさに「必要は発明の母」そのこととこれからも超危険な
核と対峙することを比較すれば 私は一時的な不便は受け入れます。
数十年後 自分が人生を終えるとき「脱原発」が実現してることを
信じてます。これが今回の原発事故からの教訓だと思います。
miccyanさんへ
>パフォーマンスのきらいは否めませんが こうやってコメントを書いてる瞬間に起きるかもしれない「東海、東南海、南海地震」を考えると過去の自民党政権も含めて誰もなし得ない英断と評価します。
そうですね。菅さんがどのような意図であるにしろ、これまでの政権が大半の責任を負うべきことに、一手、打開の手段を講じたわけですから。
ただ、堤防をつくったら、運転再開ということだけは、やめてほしい。
このまま推移すると、この夏は新たに定期点検で止まる原発もあります。54基のうち40基近くが止まる可能性があります。
それで夏場を乗り切れたら、これは、新しい段階が始まりますね。
実は需給はかなりきびしいので、一気にここまではきつい。この夏は、たいへんです。
できれば、企業に緊急助成もして、製造業や大きな電力を使うところは、天然ガスタービン発電など、短期間で設置・運転できる自家発電方式を、ひろげて、
「電気はやれるなら自前で」を、今後の企業のルールにしてほしい。
それと、夏場の操業の前倒しなどですね。
雇用に影響が及ぶことは避けてほしいです。
本来ならば、5、6年かけて転換をはかるのならば、相当な変化を起せそうです。
職場の方に、いま福島原発の何が危ないか? を聞かれて、3点、食事をしながら話しました。
書いておきます。
1)
一番可能性が高いのは、汚染水がいよいよ貯めておくところがなくなって、海へ流れ出すこと。
これが始まると、4月の流出と比べようもない大量の海への垂れ流しになることです。
始まったら、止めようがない。
(工程表で準備している水処理装置は、能力が小さすぎる。)
2)
次にありうることは、「水棺」(冠水)している1号機の格納容器が、余震で破壊、配管破損が起こること。
肉厚3センチの格納容器は、ゴム風船の大きさなら、厚さ0.03ミリの壁の厚さしかない。そもそも7000トンの水を入れるものではない。
格納容器があればこそ、圧力容器から放射性物質が出ても、食い止められてきた。今度はそれができなくなる。
汚染水も流れ出す。
そればかりか、壊れた格納容器や配管がネックになって、圧力容器を冷やす手段が、より狭まる可能性もある。
3)
温度上昇が続いている3号機の圧力容器は、さらに上がるようならば、核燃料が塩の層で固められるなどして、熱放出ができない状況になっている可能性が出てくる。万一、そうならば、より高温になった核燃料が圧力容器の壁を損壊する可能性がある。
この場合、格納容器も危うくなるので、大気中への再拡散の危険もある。
可能性は小さいが、温度と圧力を注視するしかない。
おそらく2、3号機の「水棺」は、格納容器が壊れていたり、汚染水が多かったりして、当分無理。
11日昼に、上 ↑ のように書いたら、夜のニュースで海への汚染水の新たな流出が見つかりました。
今度は3号機で、取水口付近にある、ピットが現場です。
水を採取して調べたところ、
1cc当たり、
▽セシウム134が国の基準の62万倍に当たる3万7000ベクレル、
▽セシウム137が基準の43万倍の3万9000ベクレル、
▽ヨウ素131が基準の8万5000倍の3400ベクレル、検出された、とのこと。(NHK21時のニュース)
発見が、11日午前で、「いつから流れ出ていたかわからない」とのことです。
今朝12日の新聞報道では、神奈川県の足柄の新茶に、基準を超えるセシウムが見つかりました。新茶の採取はしばらく見合わせるとのことです。
東京都のさらに南ですから、ちょっと驚きました。
福島の事故が相当な広範囲に、長く滞留する放射能を拡散したことが裏付けられました。
警戒区域の住民の方々の一時帰宅が続いています。
2時間の自宅滞在で、それぞれの方々が何をし、何を持ち帰ったか、という様子に、考えさせられました。
まず仏壇やお墓へおまいりしたり、亡くなっていた飼い犬に線香をたむけたり、夏の下着をさがしたり・・・。限られた時間なのに、流しや冷蔵庫などの腐った食物を片づける方もおられました。
録りためたCDや、写真を持ち帰る人。
私だったら、まず山の記録ノートと家族の写真関係かな、などと考えました。
工程表は、やはりぜんぜん見込みが立たないので、10数万人の避難はまだ先が見通せません。
一縷の望みというか、奇跡もありうると思ってきましたが、結局、これまで心配してきた通りになりました。
水棺作戦は、やはり確証なしの賭けにすぎなかった。
今日午後の東電の発表などで、次のことがあきらかになりました。
1)圧力容器の水位が、水位計によって確認できるようになった。
これまで、核燃料の半分以上は水面下にあるとしてきたが、水位は核燃料が全部、露出してきたほど、低かったことがわかった。
2)核燃料はすべて溶融し、圧力容器の底に落下して、表面が冷やされ、内部はどろどろに溶けた、マグマのような状態になっている。
表面に遮られて、内部の高温な部分は、水で冷やされていない。
3)圧力容器からは、おそらく底が損傷して、格納容器内に水がもれている。
4)格納容器にこれまで1万トン以上を注水してきたが、まだ半分もたまっておらず、およそ半分以上が、どこからか水漏れしている。
格納容器にも破壊されている部分がある。
(部位は、今の水位よりも下部に。)
5)以上の結果、核燃料から放射性物質が、格納容器の外にまで浸み出している。核燃料に起因する核種が確認されている。
マグマ状になって核燃料がたまっているというのは、原子力産業会議の石川迪夫氏の見立てとして、この情報ではすでに紹介してきました。
彼は推進派ですが、現状の事故対策を危惧し、水棺作戦にも「それでは核燃料は冷やせないし、汚染水を増やすだけ」と批判してきました。
結局、注水を増量までしてすすめてきたこの2週間の水棺作戦は、余計な汚染水を増やし、建屋のなかでの活動をいっそう困難にしただけで、失敗に終わりました。
そして、1号機についても、3号機と同様に、前日のコメントに書いた圧力容器のさらなる破損の恐れが、あることがわかりました。核燃料を冷やせない状態に陥っているというのは、心配です。
場合によっては、圧力容器の底抜けや、水蒸気爆発も、可能性に入れて対応しなければなりません。
核燃料を、効果的に冷やす手立てが必要ですが、この件、どなたも提唱できていません。
これからできることは、周辺対策にすぎませんが、汚染水の処理体制をスピードアップして、構築すること。
そして建屋の汚染水と放射能を減らして、格納容器などの修復をできる条件をつくることです。
水漏れについては、現状で2、3号機は、格納容器の破損の程度はもっときびしい。
汚染水は量も増え続けるし、手ごわい。
半年後も、同じ状態のまま、という気がします。
それどころか、今月もたもたしていると、海へすでに流れ出している汚染水は、さらに増えるでしょう。
制御を失った原発事故と、放射能の恐ろしさを感じます。
現場の声を聞かずにつくった「工程表」のお粗末さを痛感します。
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