神奈川県の丹沢山麓で、ことしは昨年より 十日ほど早く、今月半ばから山ウドが芽を出 し始めました。
これから、「山ウド前線」は 雪解けとともに北上し、夏山の雪渓あとでは 八月に入っても芽を出す姿に出会ったりしま す。
山麓では、ワラビと同じころに旬を迎え るので、これが時期を見定めるめやすになり ます。
淡い緑色で細かい毛におおわれた山ウドの 芽を見つけたら、根元のやわらかい土を手で ていねいに除きます。
地面の下に埋もれた白 い茎の部分は、生で食べられるところです。
深くてもせいぜい十センチ程度まで掘ると、地中 をはうような固い根にいきあたります。これ は、ウドが毎年、芽を出す母体となる部分で す。傷をつけないように注意して、ナイフで 新芽の部分だけを切り出します。
私は、丹沢で採ったことしの初もののウド を、根元は薄く裂き切りにして酢味噌で、緑 色の若葉や芽、やわらかい茎は天ぷらにして みんなで味わいました。
春先の若いウドは、三〇センチほどに成長した ものでも、根元は生で食べられます。
地上に 出た茎や葉先もやわらかく、香りと歯ごたえ のよい天ぷらに。
あるいは、かるくゆでで、 酢味噌やクルミ和えにするもよし。
茎の皮は 香りと色がよいのでむかないで、皮着きのま ま二つ割りや短冊切りにします。
場所と標高を変えて楽しめる期間が長く、 味わい方もさまざま。私はウドこそ山菜の王 様だと思います。
雪が消え始めた渓流で釣り をしていて、崖下の赤土から顔をのぞかせて いる山ウドの芽を見つけ、生みそをつけてか じったとき、初体験だっただけに香りの強さ に驚きました。
昨年夏は、長野県・八ヶ岳の ある山小屋に向かう山道で、腰ほどの背丈 になったウドをいっぱい見かけました。その 先端のやわらかい芽を摘んで、キノコ汁に入 れたらとてもいい香りでした。
ウドを採りにいくというと、「店で売って いるものを、わざわざ」と、けげんな顔をさ れることがありますが、同じウドでも山に自 生するウドは、色も姿も香りも、そして楽し み方も、まるでちがうのです。
最近は、八百 屋さんで「山ウド」を売っていることがあり ます。生食できる白い茎の部分が二〇センチほど もある栽培物ですが、その先に伸びた緑色の 芽は、野生の山ウドの姿と同じで参考になり ます。
(1990年4月24日)
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