ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

HOME > tanigawaさんのHP > 日記
2012年01月04日 21:15山と原発全体に公開

原発・野外活動情報19)赤城山のワカサギ、プラント・オパールへの吸着

1)「山渓」新年号は、安達太良山を舞台にして、山岳地帯の環境放射能
の実地計測をしていました。登山行動の範囲の比較的短時間の滞在では、
登山者の健康への影響は確率的にほとんど現れないレベルであるとしてい
ました。その汚染の水準をどう考えるかが、個々人の判断に任されること
で、対応が分かれてもそれを尊重し合うことが大切であるという角度から
の情報提供など、私には賛成できる内容でした。
  また、水場で流水から給水するときの注意なども、大事な指摘だったと
思います。

  ただ、登山者などに役立つ測定や情報提供をするならば、この情報の
No17で取り上げた、放射能の飛散ルートに位置する比較的高い汚染エリ
アでの問題を、フォローしてほしかったと思います。
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-26202
 県内にかぎらず、安達太良山よりも汚染の度合いが高いエリアは、多い
からです。

  安達太良山の東の麓の阿武隈川では、いま、原発事故の後、1万トンの
「低濃度汚染水」を海へ流して韓国などから抗議された、その1万トンの
汚染水に含まれる放射能と同じ量(推定0・15テラベクレル=1・5
億Bq)が、たった1日ごとに毎日毎日、福島市、伊達市などを経由して宮
城県側の河口から太平洋に流れ出ています。

  山岳地帯でも、阿武隈山地は、富士山最遠望の最北エリアにある日山な
どがある山地です。この山地の北部エリアは、「汚染ルート」に属する
エリアとなっています。
  同じ福島県でも、状況はかなり違います。
 甲子高原や、那須高原も、本来ならより精密な測定が必要な地域で、実際
に住民らの調査がすすめられてきています。

  もっとも強い放射能の雲が流れたのは、3月15日の2号機の格納容器
の破損の直後からで、「雲」の流路は、原発→福島市→二本松市→郡山市
→那須山ろく→足尾山地の南東側→赤城山→群馬県北部で広域に拡散→・
・・というルートです。
  実際に、12月半ばに政府は、110市町村での除染の必要を発表しま
したが、その市町村はこのルート上に連なっています。

  数値としては、毎時0・23マイクロシーベルト(年換算で1ミリシーベ
ルト)以上の被ばく線量が予測される地域を含む市町村が除染対象に指定さ
れています。
(除染指定の市町村には、上の北関東ルートとは別に、一路南下ルートの
エリアにある、茨城、千葉県内の市町村も入っています。)

2)福島から北関東へのこのメインの汚染ルートの地域では、群馬県赤城山
の中腹にある大沼のワカサギが、食品の旧基準(1キロ当たり500ベク
レル)を超すセシウム汚染が確認され、12月以降もまだワカサギ漁が解禁
になっていません。

  栃木県でも、県北部の畜産農家が行き場のない稲わら(1キロ当たり
8000ベクレルという測定もあり)が、各農家が大量にかかえ、始末に
困っている状況が、12月に入ってから、明らかになりました。

那須山ろくでは、事故直後には、最大1・75マイクロシーベルトを
記録。
  食品の旧基準を超えていなかったのに、生の牧草で牛を飼って自然のま
までうまい牛乳を生産してきた、真面目な酪農家が、安全に徹する判断から
牛乳の出荷を見合わせてきています。

阿武隈山地の南端のエリアでは、夏の終わりの段階で、野生きのこの
出荷・収穫の禁止のおふれがまわりました。

「山渓」にすべてを期待するわけではありませんが、山岳地帯の汚染
ルートの問題だけでも情報提示していただけたら、登山者や山菜・きの
こ狩りの人にとっては、どのエリアに入る場合も、総合的な判断と対策に役
立ったのではないかと思います。

私の場合、毎年、奥利根エリアのブナ林に通ってきたものの、2011
年の秋は結局、この地には一度もきのこ探索には行きませんでした。汚染
ルートが公表されていなかった5月までは、通ってきた地域でした。
 秋の森の探索は、かなりの粉じんを吸いますから、とくに子どもたちを連れ
ていくのは、まだ当分は、気を使ってしまいます。

3)この森の放射能の除染で、いろいろと新しい研究がとりくまれてきて
います。
  私が注目した1つは、植物が自分の体でつくる微粒子(プラント・オ
パール)が、セシウムを、よく吸着する、という研究成果でした。

  プラント・オパールは、粒子の大きさが1ミリの数十分の1程度の微粒
子です。葉や茎にびっしりと作られて、この微粒子がセシウム(セシウム
137は半減期約30年)とよく結合・吸着します。

  千葉大学などの実験では、大量の放射性セシウムを含んだ泥に、雑草を
腐らせたものを混ぜて、フィルターでろ過すると、セシウムのほぼ全量が雑
草のプラント・オパールに吸着されて、フィルターで濾し取られて、元の泥
から分け取ることができたとのことでした。
 
  これは、一面では朗報で、森や田畑のセシウムを除染する有効な方法
へ、進むことができるかもしれない。
  でも、もう一方では、かなりきびしい問題も予言しているように思いま
した。

  というのは、私には、こういう植物によるセシウムの吸着は、森や湿地
では自然のこととして行われているように思うわれるからです。
  原発事故から最初に迎えた秋は、もう過ぎてしまいました。木の葉や野
草の体に大量に付着したり、地表の腐葉土などにとりこまれたセシウムは、
最初の秋は確かにまだ地表にとどまっています。

  でも、2年目の秋、3年めの秋も、またすぐにやってきます。
 そして、新しい落ち葉が、古い腐葉土の層を覆い、堆積して行きます。
 深い腐葉土の下の層へと、セシウムを沈積していく。
 チェルノブイリで野生のきのこや水源が何十年も汚染が続いているよう
に、いまの半年、そして1年ごとに、できるかぎりの対処を進めないと、
長期的な汚染の継続が確定していってしまうのではないかということで
す。

  ブナ林の腐葉土の層は、30センチ、50センチという厚い層をなして
います。
  その腐葉土の層の下部にセシウムが蓄積された場合、山菜やきのこの森
はもちろん、山岳渓流を通じて、ダムや大きな河川の汚染も、長く続くこと
が予想されます。

 こうなると、いったい何十年、セシウムに気を配らねばならなくなるのか、
ちょっと想像がつきません。
 利根川は、首都圏の水がめですが、阿武隈川の汚染のしくみは、この川で
もはたらくように思います。濃度がより低いならば、低いなりに。

4)前回のこの情報いらいのもう一つ、見逃せないニュースは、食品の汚染
の基準が、これまでよりも厳しく改定されたことでした。
 飲用水の基準も、厳しく設定されました。

(単位 1キログラム当たりベクレル)
現在(暫定)     新基準
野菜類    500   一般食品    100
穀類     500
肉・卵など  500
牛乳・乳製品 200   牛乳       50
           乳児用食品    50
飲料水    200   飲用水      10

  このことでは、3つ問題があります。

<第一>いままでの基準はなんだったのか? 来年4月までは、この基準で
食品の出荷規制などをおこなわないなら、その間の安全確保はどういう説明
になるのか? 
すでに従来基準で、非常に多くの農産物や加工食品が、市場に出回っています。
どうやって実施が担保されるんだろう。

<第二>問題は、いま大半の食品は、検査体制の外にあるということです。
  福島の10月以来の米の基準超えからみても、1市町村でわずかの測定
の失敗が、問題を却って大きくしました。
  基準がきびしくされても、検査されない食品が出回るならば、何にもな
りません。

 <第三>私は、基本は全面検査と、公表だと思います。
  基準以下でも数値を公表して、判断は家族構成、年齢などをもとに、ま
かせる。その判断を尊重する。
自主避難問題と同じで、判断が家族ごと、個人ごと、住む地域ごとに異
なって当然です。

5)福島市の実家は、年末に2度目の「自主除染」をして、姉の孫たちを2
晩だけ、家に迎える体制をとりました。今度は高圧洗浄機も使用。山好きの
義兄は、ザイルを使って屋根にもあがったと言っていました。
  国は年間20ミリという高い被ばく線量のエリアしか、みずからは除染
をしない計画で、実質は市町村と個人まかせです。実家は年間5ミリ程度な
ので、自治体の対策待ちです。
  政府は「事故の収束」を宣言しましたが、現地は時間とともに、暮らし
も営業も農業も、困難が広がっている。終わるどころか、現在進行形だとい
うのが私の実感です。
お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:757人

コメント

RE: 原発・野外活動情報19)赤城山のワカサギ、プラント・オパールへの吸着
こんばんは。
おひさしぶりになります!


福島県伊達市に住むワンゲル時代の先輩から、年賀状が届きました。。

『家族みんな笑顔で暮らしています。・・』


tanigawaさんが書かれた、
震災当初の日記
飯舘村の乳牛に関しての内容、
これを読んで、
真っ先に、先輩にご連絡致しました。

これに関することが報道される、全然前のことです。
tanigawaさんの、日記以外では知り得なかった情報でした。


おかげさまで
土壌汚染に関して、細心の注意をしてもらうことができました!


現役時代お世話になった先輩に
少しでも御恩返しができたことを
うれしく思っています。。
2012/1/7 1:00
RE: 原発・野外活動情報19)赤城山のワカサギ、プラント・オパールへの吸着
 keisukeさんへ

 伊達市に、山のお知り合いがおられたんですね。
 伊達市は、私の実家の本家があるところで、父母の菩提寺
もここにあります。
 福島市と同等か、地区によってはやや上回る汚染に見舞われ
てしまって、アンポ柿などに大きな被害をこうむっていますね。
 私の伯父は、ここで高級洋ナシを栽培してきました。贈答用
ほど打撃が大きいです。

 震災・事故の直後の情報は、もっとも基本的なことが伝えら
れてこなかったことが、避難や備えに大きな影響を与えて
しまったと思います。
 最初の水素爆発の際に、NHKの生の解説に来ていた大学教授
は、なかなか現実を認めず、NHKも「爆発的ななんらかの事象
があった」などとしていました。映像そのものも他社のものでし
た。
 この大学教授は、その後、大学として多額の献金を原子炉製造
メーカーから受けてきたことが、新年になってから明らかになって
います。

 映像から見て、事態は誰が見ても危ういことが始まっていたの
は明らかで、当時の私の日記も、親戚、友人に、とにかくいま
あるガソリンを使いきれるところまで、逃げろ、という話題が、
このあと展開されてゆくことになりました。
 ところが、私も、15日にまさか北西に風が流れているところ
で、2号機の一番の放射能放出が起こるとは、まったく想像も
できなかった。
 このときに、伊達郡や福島市も、直近の飯舘村も、いまに至る
最大規模の汚染が始まったことになります。

 飯舘村の件は、NHK取材陣の良心的なとりくみで、一矢報いた
という感じですね。ヤマレコの他の方の日記へのコメントなどで、
私も状況の理解が進みました。

 以上の経過のすべてについて、政府、東電、保安院、安全委員会
などは、「スピーディ」の拡散シュミレーションを含めて、すべて
予測し、かつ東電は一時は現場から全面退避まで提起していました。

 2号機だけの格納容器の破損で済んでまだ幸運だった。
 2つ、3つと破損したら、ほんとうにたいへんなことになって
いたと思います。

 それと、放射能の雲の主要コースは、那須から群馬へ向かい、
首都圏の一番の人口密集地帯へは、こなかったのですね。
 被ばくは時間と時々の線量の関数であり、被ばくの影響は人口
の関数です。
 東京の人びとが、ここから何をくみ取るかが大事と思う。

 運転・管理者らが、事故時に、全面退避をするようなものは、
やはり動かす方がおかしいです。 
2012/1/7 7:51
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する